「クーデターは最悪の選択」 ミャンマー国軍の元士官が明かした本音

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ヤンゴン=翁長忠雄
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 38歳のミャンマー国軍の元佐官は、私を探るように見て、録音はせずにメモだけにしてほしいと言った。そして、クーデターを予想していたかとの問いに、「起きる可能性は70%あると思っていた」と答えた。

 ミャンマーでは昨年2月、国軍がクーデターを起こして実権を握った。その前年の総選挙でアウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝し、2期目に入る直前の出来事だった。

 国軍が自ら進めた2011年の民政移管以降の民主化の果実を台無しにできる理由とは何なのか――。私は、その答えを見つけたかった。1年余り過ぎた今年3月、初めてミャンマーを訪れた。

 現地の助手のネットワークを通じて退役軍人を捜した。国軍が支配するいまのミャンマーで、現役の兵士や将官からじかに取材するのは至難の業だからだ。

 元佐官は約束の場所に、ミャンマーの民族衣装ロンジーを着て現れた。高校卒業後に国軍に入ったという。「当時、若者の将来の選択肢は限られていた。医師かエンジニアか国軍の将官になるのが理想的とされた」。国軍にいた約20年のうち、最もやりがいを感じたのは、少数民族武装組織との停戦交渉に携わったときだ。一定の権限を持ち、武装組織と交渉できたという。だが、家族とともに過ごす時間を増やしたいと思い、退役した。

 クーデターの背景には何があったと考えているのか?

 「NLD政権と国軍の関係が…

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