熊本県警巡査の自殺、遺族が県を提訴へ 県警などの対応は「不誠実」

吉田啓
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 熊本県警玉名署刑事課の巡査だった渡辺崇寿さん(当時24)が2017年9月に自殺したことをめぐり、渡辺さんの母ら遺族が近く、県に7818万円の損害賠償を求める訴えを熊本地裁に起こすことが、代理人弁護士への取材で分かった。遺族側は、県警が渡辺さんに長時間労働を続けさせて安全配慮義務を怠ったと主張している。

 渡辺さんの自殺については一昨年11月、公務災害と認められた。だが、弁護士によると、その後も県警から遺族に対して謝罪や説明がないといい、「間違いを認めなければ、また同じ過ちが繰り返される」として、提訴することにしたという。

 地方公務員災害補償基金の公務災害認定などによると、渡辺さんは12年4月に警察官となり、17年4月に玉名署刑事課に配属された。配属後、事件が立て込むなどし、同年8月末まで5カ月連続で時間外勤務が100時間を超え、7月は163時間に及んだという。こうした状況から「業務上の負荷が積み重なったことにより精神疾患を発症し、自死に至ったと考えられる」と認められた。

 今回、遺族側は認定された事実をもとに、県警が渡辺さんに「常軌を逸する長時間労働」をさせて自死に追い込み、安全配慮義務を怠ったと主張している。

 また、公務災害認定後も県警からの謝罪や説明がなかったため、県に対して責任を認めた上での謝罪と、再発防止体制の構築や賠償金を支払うことなどを求めたが、蒲島郁夫知事名で、渡辺さんの冥福を祈り「このような悲しい出来事が繰り返されないように努めてまいります」と書かれた簡素な書面が届いただけだったという。

 渡辺さんの母美智代さん(61)は弁護士を通じて、「県や県警は、崇寿の死を終わったこと、特殊な一例として片付けようとしている」「不誠実な対応を繰り返す県や県警に自浄作用を期待することはできない」などとコメントした。

 蒲島知事は20日の定例記者会見で「まずは亡くなられた職員の方のご冥福を祈り、改めてお悔やみ申し上げます。訴状が届いていないので、コメントは差し控えさせていただきたい」と述べた。(吉田啓)