企業や金融…経済に「生物多様性」組み込むには 専門家に聞くヒント

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聞き手・杉浦奈実
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 「脱炭素」のかけ声もあり、企業や金融の気候変動対策の動きが加速している。一方、生物多様性については、気候変動ほどの広がりは見られていないようだ。三井物産戦略研究所の本郷尚シニア研究フェローに、現状と、今後取り組むべきことについて聞いた。

 ――生物多様性保全に関する、企業や投資の関心は

 2010年の国連生物多様性条約締約国会議(COP10)の時、気候変動に続く重要な課題になるという機運が高まっていました。でも、どこから取り組むのか、切り口が悩ましい。どうしたら民間投資を呼び込むことが出来るかなど議論は盛り上がったけれど、急ぎすぎたという印象です。

 経済や私たちの生活は環境に負荷をかけて成り立っています。自然を破壊しても、それを上回る価値を生み出しているというのが従来の経済の基本でした。それに対し、市場では価値が評価されていないものも含め「全てのものに価値がある」という生物多様性の考え方は、かなり大きな変化です。

 ――どういうことですか

 ナチュラル・キャピタル(自然資本)という考え方があります。GDPなどの所得統計は、自然資本は開発することで価値がでるという「フロー」の考え方です。

 でも、フローを生み出す資源も消耗しますので、ストックを考えにいれないと本来はおかしいのです。ルール、発想の転換です。

 今は払うべきコストを払わずにストックを利用して経済を回している状態ですが、自然資本は永遠ではありません。少なくとも維持するという状態にしなければ、どこかで破綻(はたん)します。長期的に見れば、生物多様性の劣化は事業リスクになり得ます。

 ほんごう・たかし 1958年生まれ。国際協力銀行で融資のための環境ガイドライン作成などを経て現職。気候変動問題、生物多様性などに資金メカニズムの観点から取り組む。

 ――経済システムに組み入れ…

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