戦争の悲惨さ、平和の大切さどう伝える 阪大生が豊中市民らと考えた

瀬戸口和秀
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 どうしたら戦争の悲惨さや平和の大切さを伝えられるか。大阪大学の学生たちが昨年春から大阪府豊中市民や市職員と一緒に、市立人権平和センター豊中の平和展示室のあり方を考えてきた。ロシアのウクライナ侵攻が起き、平和や戦争を改めて見つめ直していた。

 「1年の振り返りをして、それぞれの活動を共有したい」。3月31日、同センター豊中の会議室。大阪大の日本学研究室の学生と市民、市職員ら10人余りが会議に参加し、この1年間の活動を振り返った。

 集まったのは平和展示室「語り継ぐ会」のメンバーたち。大阪大大学院生の松永健聖(たけまさ)さん(25)が一昨年夏ごろ、同センター豊中の佐津川晋(しん)館長に「一緒に戦争や平和について何かできませんか」と相談したのが、会の設立のきっかけだった。

 大学院で戦後の占領期の女性たちの生き方などを研究する松永さん。学部生の時に沖縄戦での性暴力を研究したり、教育実習の際に市内の小学校で平和教育に携わったりしてきた。

 松永さんの相談を受けた佐津川館長は、市民らとも連携しようと考えた。戦争と平和を学ぶ勉強会に参加していた元小中学校教員らに声をかけ、大阪大の研究室の有志も加わり「語り継ぐ会」が昨春にできた。

 平和や戦争に関する絵本の読み聞かせなど大きく五つの取り組みがある中で、松永さんは、豊中空襲などを紹介する展示室を見学する小中学生に配り、考えなどを書き込んでもらう「展示用ワークシート」の作成を担当した。

 豊中空襲では、1945年6~7月に計6回の空襲で575人が亡くなった。展示室には空襲で使われた爆弾の模型や墜落した米軍戦闘機の残骸が並ぶ。

 松永さんは知識をただ伝えるだけでなく、展示物を見ながら戦争や平和を考えてもらうシートを作りたかった。小中学生の頃に受けた平和教育の経験も振り返りながら考え、平和教育に関する学会に参加し、学会誌も読んだ。2カ月ほどかけ、同じチームの元教員らの助言も受け、A4サイズで6ページのシートを作った。

 作成中の2月下旬、ロシアのウクライナ侵攻が起きた。「戦争は遠いことではない。豊中空襲などがより生々しく感じられた」

 シートではこう問いかけた。「平和って何だろう?」「どうして戦争で多くの人が亡くなったの?」

 松永さんと同じ大阪大の日本学研究室から参加した野田朝香さん(23)は、ある遺族から市に提供された手紙やはがきを読み解くチームに入った。岡山の部隊にいた兵士の男性が1945年夏に書いた全12通で、妻や母に宛てたものだ。

 「戦況の悪化が伝わり、家族を心配する姿が印象的だった」という野田さん。6通の内容を中心に平和展示室で紹介し、理解しやすいようにと、登場人物の相関図などを描いたパネルも作った。世代を問わず興味を持ちやすいように、同じチームの男性が手紙などを朗読する様子をビデオ撮影し、展示室で見られるようにした。

 「ロシアの侵攻もあって、どうしたら戦争がなくなるのか、考えさせられた。手紙やはがきの展示は小さな取り組みだけど、平和を考えるものとして共有されていけば」と話す。

 語り継ぐ会に参加する小田康徳・大阪電気通信大学名誉教授(日本近代史)は「学生たちは豊中という身近な所から戦争を知ったり、当時の資料から戦争の不条理に衝撃を受けたりと、自ら積極的に取り組む過程でいろんなことを学んだと思う」と話した。

 語り継ぐ会はこの春以降も新たなメンバーが加わって活動を続ける。(瀬戸口和秀)

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