「奇界遺産」を巡る旅 奇妙と普通の「境界」で写真家が見たものは

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西田理人
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 世界各地の「奇妙なもの」をテーマにした作品で知られる写真家の大規模個展「佐藤健寿展 奇界/世界」が、兵庫県西宮市西宮市大谷記念美術館で開かれている。めまいを覚えるほどの驚異的なイメージの数々が、奇妙=奇界と普通=世界の「境界」をあぶり出す。

さとう・けんじ 1978年生まれ、武蔵野美術大卒業。写真集『奇界遺産』3部作は異例のベストセラーとなり、TBS系「クレイジージャーニー」やNHK「ちきゅうラジオ」などのメディア出演のほか、雑誌・広告向けの撮影、企業キャンペーンの監修など、活動の場を広げている。2021年に最新写真集『世界』を刊行。個展は6月5日まで。

 人類のDNAに好奇心というものが書き込まれたのは、いったいいつのことだろう。未知なる他者との出会いはいつだって、めくるめく世界の多様性と自らの価値観の限界に触れる、特別な体験の機会を私たちにもたらす。

怪物のいる庭園、一糸乱れぬマスゲーム

 写真家・佐藤健寿は、大学在学時から20年余りにわたって、世界各地の「奇」なる事物や文化を撮影してきた。そこに写るのは遺跡や廃虚、儀礼、祭祀(さいし)など。ある種の過剰さを伴ったビジュアルイメージ群は、圧倒的な強度をもって鑑賞者の眼前に迫ってくる。

 左右の目から1本ずつ手が飛び出す、何ともユニークな神像。あるいは、死後の世界をイメージした不気味なテーマパークや、怪物の彫刻に埋め尽くされた庭園。10万人とも言われる群衆が一糸乱れぬ動きを披露する北朝鮮のマスゲーム(集団演舞)に、廃虚と化した核ミサイル発射場跡――。

 多種多様な被写体に共通するのは、どれほど異様に見えようとも、それらが人間の営みによって生み出されたものだということだ。写真家は、人類の尽きせぬ想像力とエネルギーにレンズを向け続けてきた。

 世紀末という独特の時代背景の中で思春期を過ごした佐藤にとって、古代文明や未確認生物といった「世界の不思議」は、テレビや本で日常的に目にする身近な存在だった。

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