ものと暮らしの関係は、うつろいながら、時計の針が重なる時がある。京の町家のどこにでもあったのが、気づくと消えかけ、また息を吹き返した「鞍掛(くらかけ)」もそのひとつかもしれない。
京都御所の北は下鴨の糺(ただす)の森(もり)近く、骨董(こっとう)と山野草の店「二十日(はつか)」に、京都のヒノキを使う新品の「鞍掛」が並んでいる。店主の栗山葉子さんが、祖父の代から家族で使うものをモデルに復刻させた。「古道具の市にも出なくなり、どこで手に入るかわからない。それを誰も気にしないのが見過ごせなくて」
「鞍掛」という言葉の通り、馬の鞍を置いた台から転じた生活道具だ。天袋に手を伸ばす時は踏み台に、インゲンの筋を取るような台所仕事では椅子にした。ところが、現代の客の反応は意外だった。「寝室のテーブルにいいとか飾り台にするなど、デザインを気に入ってくれる。フランス人でバスルームで使うという方もいて、こちらが戸惑いました」
町家ではどこに置いたのか。四条烏丸(からすま)にある重要文化財の杉本家住宅。10代当主で料理研究家の杉本節子さんに聞くと「父が幼い頃にはすでにあったものが、いまも走り庭で現役です」。
家族が代わる代わる使っては…
【7/11〆切】スタンダードコース(月額1,980円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら