那須塩原市のアジア学院 途上国の学生と共に楽しむ

小野智美
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 【栃木】途上国の農村指導者を養成する専門学校「アジア学院」は、那須塩原市の田園に囲まれた丘の上にある。

 敷地は6ヘクタールと広大。学生寮や職員住宅のほか、田畑に豚舎、鶏舎がある。

 キリスト教神学校併設の研修所を前身として、1973年に創設された。海外からの留学生がほとんどで、宗教を問わず毎年数十人を迎え、これまで61カ国の1368人が学んだ。学院の公用語は英語。

 留学生は25~45歳が中心。農村地域を良くしたいと志している人のほか、都市部で貧困層の支援に取り組んでいる人もいる。

 カリキュラムは9カ月間。何を学ぶのか。

 「持続可能な農業」がその一つ。大柳由紀子副校長(50)は「最新技術に頼らず、五感をフルに使って有機農業を学ぶ。その技術は、それぞれの国で応用できる」。また、学院での日常生活では、地域における共同体のつくり方や理想の指導者のあり方を体感できるようにしている。

 掃除や朝晩の食事作りは、荒川朋子校長(55)ら職員も参加し、平等に分担する。礼拝堂の「オイコスチャペル」で朝開く集会では毎回1人ずつ、全員が順番に講話を担う。座席は階段状で、演台は一番下。皆に見下ろされながら話す。

 荒川校長は「形から入るのは大事。人の上に立つ支配型の指導者ではなく、人に仕える奉仕型の指導者(servant leader)を育てたい。支えたくなる指導者なら人は快く協力する。社会の周縁の暮らしを良くするには、人々が主体的に動いてこそ」と話す。

 大半の留学生の学費と生活費を奨学金と募金で賄う。週末の食費などとして、毎月1万6千円を支給している。帰国後に備え貯金する人もいるという。

 これらの財源は、キリスト教会を中心とする外部から届いた寄付金だ。

 毎年、百人以上が入学を希望して問い合わせてくる。応募には研修目的を理解し推薦してくれる団体が必要だ。留学の成果を、帰国後に確実に生かしてもらいたいからだ。所属するNGOや農業組織、難民定住支援組織など多様な団体が地域の命運をかけて応募者を選び、推薦してくる。

 2020年度、学院は創設以来初めての試練に見舞われた。コロナ禍のため、入学するはずだった学生19人が来日できなかった。

 アフリカのシエラレオネの4人は、日本へ行く途中でガーナにいた。が、コロナの水際対策により国境が閉鎖。行き場を失った。

 ガーナ出身の職員ティモティ・アパウさん(62)はSNSで、ガーナにいる卒業生らに助けを求めた。

 すぐに18年度の卒業生が「僕の所へ」と応じた。彼は国境の閉鎖が解かれるまで5カ月間、学院での経験をもとに4人に研修をおこなった。職員らは今もこの卒業生を誇りにしている。

 学院の建物の礎石には、日本語と英語で「共に生きるために」という言葉が刻まれている。創設者の故・高見敏弘牧師が、アジアの学生から、戦時中の日本軍による被害を聞いた時の思いも込めて記したものだ。

 昨年度の留学生はゼロだったが、今年度は29人が来日できそうだ。それぞれの国から深刻な課題を抱えてやってくる学生たち。学院では、彼らが互いに異なる価値観に触れ、苦楽を分かち合う生活が待っている。

 荒川校長は「ここで共に生きることを楽しめるならば、世界は変えられる」と語る。(小野智美)

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 アジア学院 那須塩原市槻沢442の1。職員は約30人。多数のボランティアも運営を支える。1995年度から日本人学生の募集も開始。96年に創設者の故・高見敏弘氏はアジアのノーベル賞と称されるマグサイサイ賞を受賞した。