「千カ所で演奏、ぬくもりある音を」和太鼓奏者、渡米へ

高木文子
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 全米の千カ所を演奏してめぐりたい――。大きな夢を抱く和太鼓奏者が、今秋の渡米に向けて準備している。岐阜県恵那市で活動するプロ奏者の加藤拓三さん(41)。20代から渡米して演奏活動をしており、「もう一度、世界へ飛び出す」という夢をかなえたいという。

 2008年の東京国際和太鼓コンテスト(大太鼓部門)で最優秀賞を獲得した加藤さんは、09年に故郷・恵那市の民家1068軒を訪ねて無償のコンサートを開いた。5~10分の演奏をはさみ、訪問先の家族と1時間ほどおしゃべりしたこともあった。「知名度はなくても、和太鼓のぬくもりのある音を届けたい」

 幼いころ、看護師だった祖母に連れられ、地域のお年寄りの家をめぐった。福祉の道を志して日本福祉大付属高校(愛知県美浜町)へ進んだが、部活動をきっかけに和太鼓にのめり込み、名古屋のセミプロ集団に参加した。大学卒業後は佐渡(新潟県)の太鼓芸能集団「鼓童」で研修。米カリフォルニア州にも3年間滞在して、腕を磨いた。

 27歳で故郷にスタジオを構え、ぎふ清流国体(12年)やミラノ万博(15年)で演奏。プロ活動のかたわら、障害者施設の利用者や地域の子どもたちを指導し、子ども向けの米づくり体験会も毎年開いてきた。地域の子どもたちに「たくちゃん」と慕われる。「岐阜から発信するからこそ『あったかい音』が演奏できた」と加藤さん。

 一方、30代で「再び世界へ」という断ちがたい夢があった。コロナ禍で予定より遅れたが、年内にビザを取得する計画だ。米カリフォルニア州を拠点に5年間、演奏活動をしたいという。これまでの活動のつながりや日系人社会の人脈を生かし、住宅や医療・福祉施設など千軒を回ってドキュメンタリー映像に収める予定だ。

 米国には妻と息子3人も同行する。40代の挑戦に妻の泉名(いずな)さん(37)も「一度きりの人生だから」と背中を押してくれた。渡米を控えた3月、岐阜県の飛驒・美濃観光大使に委嘱され、県のPRも託された。「演奏を通じて岐阜の魅力を発信したい」(高木文子)