ゼロコロナ政策下の感染拡大、習指導部に暗雲 上海トップの責任論も

新型コロナウイルス

北京=冨名腰隆、上海=井上亮
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 中国の新型コロナウイルス感染拡大が習近平(シーチンピン)指導部を苦しめている。1カ月近く都市封鎖が続く上海に続き、首都北京の中心部でも感染者が増加してきた。習氏の腹心の上海市トップに責任論が浮上するなど、「ゼロコロナ」政策を徹底して万全の態勢で臨むはずの共産党大会にも、暗雲が漂い始めている。

 25日、日本など各国の大使館や外国企業が多く集まる北京市朝陽区で、全住民と働く人を対象にしたPCR検査が始まった。同区内には約350万人が暮らし、日本人も多い。市政府は27、29両日にもPCR検査を求めている。

 24日夜に検査の通知が出ると、上海のような都市封鎖を予期した住民がスーパーに殺到し、買いだめに走った。混乱を恐れた当局は、SNS上に出回った買い物客が行列をつくる画像を次々と消去した。

 22~25日の北京市内の感染者数は70人。約1カ月で累計50万人が感染した上海と比べれば、まだ深刻な状況ではない。それでも市政府の危機感は強い。一部地域を外出禁止にしたほか、4月末からの連休で市内の旅行も控えるよう呼びかけている。

 2020年のコロナ拡大以降、政治の中枢である北京の対策はとりわけ厳しく、2月4日の北京冬季五輪にあわせてロシアのプーチン大統領らが訪中するまで、要人との会談すらほぼ北京以外で開催してきた。衛生当局関係者は「北京が上海のような全市封鎖になる事態は絶対に防がなければならない」と語る。

 習国家主席は3月17日、党最高指導部メンバーである政治局常務委員を集めた会議で「堅持こそ勝利だ。ゼロコロナを堅持する」と訴えた。人の移動を徹底管理するゼロコロナ政策について、専門家から「長期的に続けるのは難しい」との指摘もある中、継続の意思を示した形だ。

 背景には政治的な理由もある。20年春に武漢の感染を抑え込んで以来、習氏は「わが国の実績は党の指導と社会主義制度の優位性を十分に示すものだ」と繰り返しアピールしてきた。昨年採択した「第3の歴史決議」にも、「党中央の感染対策は大きな成果を収め、偉大な精神を築き上げた」と誇る文言がある。感染対策を政治体制の信任と結びつけたため、政策変更が難しい状況に陥っている。

 習氏はむしろ対策の徹底を求め、現場の引き締めを図っている。政治局常務委員会議では「早期の対応がカギを握る。職責を果たせない幹部は直ちに処分する」と厳命した。

 焦点となるのが、上海だ。3月28日から始まったロックダウン(都市封鎖)からまもなく1カ月が経つが、市内は大部分で外出制限が続く。感染者数は1日2万人前後で高止まりしたまま。今月17日に約2年ぶりに確認された死者は増え続け、24日には51人が死亡した。上海の感染拡大を許したトップは、習氏の浙江省時代の腹心である李強党委員会書記だが、一部から責任論も出始めた。

 上海書記は最高指導部への「出世コース」であり、1989年に江沢民氏が総書記に昇格して以来、政治局常務委員入りを逃したのは汚職で失脚した1人しかいない。だが、感染拡大を止められず、視察先で市民から罵声を浴びせられる動画まで流出した李氏の立場は厳しくなりつつある。党関係者は「習氏側近だからといって例外などない。コロナ対策への評価は非常にシビアだ」と語る。(北京=冨名腰隆、上海=井上亮)

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