ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、様々な情報やメッセージが飛び交っています。なぜ、欧米諸国は戦況や機密情報を公開できるのか。バイデン米大統領の激しい発言の背景は何か。元海上自衛隊海将補で徳島文理大人間生活学部の高橋孝途教授(国際政治・安全保障論)に聞きました。
ゼレンスキー氏、あえて危険を冒しても動画投稿
――米国防総省などが連日、ウクライナの戦況を詳しく解説しています。
当局は通常、機密情報を公開したがりません。情報ソースや分析能力を相手に知られてしまう恐れがあるからです。ただ、科学技術と民間の情報ネットワークが発達し、昔は機密だった情報が機密でなくなっています。例えば、一般市民がウクライナで起きた出来事を、スマホで撮影してリアルタイムで伝えています。いわゆる「こたつCIA(米中央情報局)」と呼ばれる活動です。商業衛星の情報を使って、戦況分析や民間施設が攻撃された時期を割り出して発信している人もいます。
米国防総省は以前、ロシア軍がキーウ(キエフ)近郊で60キロの車列を作っていると発表しました。30年ほど前なら、考えられない情報提供です。ロシア軍がウクライナ侵攻前に、「ベラルーシで演習を終えた戦車が列車に積まれて帰途についた」と発表しましたが、すぐにウソだと見破られました。周辺の市民の目が常にあるからです。
米英などが公表している情報は、逆にみれば、こうした民間の情報でも検証できる範囲にとどまっていると考えることができます。もちろん、CIAなどは、更に精密で多様な情報を収集しているはずですが、そのような情報は表に出しません。
――ウクライナのゼレンスキー大統領の動画には、いつも背景が入っています。場所の特定を恐れ、背景を消していたビンラディン容疑者の映像と対照的です。
ウクライナが最も警戒しているのは、ロシアによるゼレンスキー大統領の殺害、「斬首作戦」だと思います。動画はリアルタイムで流すわけではなく、ある程度時間を置いてから発表しています。それでも、室内であればある程度安全でしょうが、キーウ近郊のブチャでの視察など、外部での行動には勇気が要ります。
なぜ、あえてそのような危険…
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