スコアブック埋めた完全の重み 新担当記者が佐々木朗希に学んだこと
28年前の自分は何をしていたんだったか――。
考えてみたが、そもそも生まれてもいなかった。
まして、取材歴が通算5試合のプロ野球記者では、ほかに比べようのないこの出来事の大きさを、どう文字にすればいいのか。
目の前で起きた20歳の快挙に、興奮と混乱がない交ぜになっていた。
4月10日、ZOZOマリンスタジアム。千葉ロッテマリーンズ・佐々木朗希による、プロ野球史上28年ぶり16人目にして史上最年少で達成した完全試合のときのことだ。
「ちと、マズイ展開やなあ」
4月1日付で東京に転勤し、ロッテ担当になった私に、「指導役」でついてくれた先輩がつぶやいた。
午後2時39分。佐々木が三回までに7者連続三振を奪ったときだった。
先輩の予感は的中する。
佐々木は勢いそのままに五回を投げ終えて、連続奪三振をプロ野球新記録となる13にまで伸ばした。それどころか、試合が始まって走者を1人も出していない。
速報を見た他球場の担当記者からも、LINEが届く。「完全試合もあるな」。近くに座る記者たちがパソコンのキーボードをたたきながら、電話口の上司に早口で状況を伝えている。
事態の大きさと、それにふさわしい記事を書かなければならない不安で、ひざが震えた。
うなる直球に腰が引ける打者…
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