被災者の味方 キッチンカー 自治体と業者団体が支援協定続々

東孝司
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 大きな災害が起きれば避難所に民間の「キッチンカー」が駆けつけ、被災した人たちにできたての料理を振る舞う――。そんな災害支援に関する協定が、キッチンカーの飲食業者でつくる団体と自治体との間で続々と結ばれている。

 キッチンカーは発電機やプロパンガスを搭載していて、災害で電気やガスがストップした状況でも調理が可能。2011年の東日本大震災や16年の熊本地震などでは全国から被災地にキッチンカーが集まり、被災者の「食」を支えた。

 発生確率が上がっている南海トラフ地震で、大きな被害が想定される徳島県。県内でコロッケやたこ焼き、ラーメンなどを移動販売している26業者が21年12月に県キッチンカー協会を組織した。地震の際に業界を挙げて地域貢献を進めるためだ。

 協会が災害支援の最初の締結先として選んだのは、南海トラフ地震で津波被害が予想される小松島市。4月15日に市役所であった締結式で代表理事の中川和也さん(49)=美馬市=は「寒い時期に温かい料理、暑い時期に冷たい料理を提供したい。料理を振る舞うことで、被災者が空腹を満たすだけでなく、元気を取り戻してくれれば」と話した。

 協会は5月5日、小松島市内にあるJA東とくしまの施設「みはらしの丘あいさい広場」で「防災マルシェ」と題したイベントを開き、キッチンカーによる炊き出しを実演。今後、県内の他市町村との協定締結も検討していく。

 愛媛県では一足早く19年、愛媛キッチンカー協会が発足した。事務局長の大木鉄兵さん(43)によると、「県内の広い地域で災害が起きたら、10台、15台では役に立てない」との考えから、設立から2年間は会員規模の拡大と営業の地盤固めを優先させた。

 現在の会員は54業者で、50台が見え始めた21年夏から自治体支援に乗り出した。松山、今治、西条、宇和島各市と上島町と協定を結んでいる。実際の災害現場への出動機会はまだないという。

 21年7月に発足したのは香川県キッチンカー協会(会員26業者)。まんのう、宇多津、琴平各町や丸亀、坂出両市と協定を結び、近くさぬき市とも締結する予定だ。支援の実績はないが、21年秋に県内であった避難訓練にキッチンカーを派遣。車1台で1時間に70~80食、1日に500食程度を提供できることを実際に確かめた。

 会長の金光一成さん(45)は「いざ災害が起きれば何を置いても支援にかけつける気持ちでいるが、事前に協定を結んでおけば、避難所にキッチンカーを乗り入れやすい。行政と協定を通じて連携を深めておくことで、本当に足りない物資や欲しい食事は何かを把握でき、『ミスマッチ』になることなく支援できると思う」と話している。

 3県の協会は災害支援のノウハウを共有することで合意。協会のない高知県の業者との連携も進めていく。

 東日本大震災の被災地、宮城県名取市も20年8月、宮城キッチンカー協会と炊きだしに関する協定を結んでいる。(東孝司)