歴史社会学者、小熊英二・慶大教授が解説するジェンダーギャップ(上)
都道府県ごとに、政治や経済など各分野でジェンダーギャップ(男女格差)がどのくらいあるのか。朝日新聞は、国の統計データを使って数値化し、女性の現在地の「見える化」を試みました。
浮き彫りになったのは、とりわけ政治と経済の分野での女性進出の遅れでした。
歴史社会学者の小熊英二・慶応義塾大学教授は「各地域の産業や固有の社会的事情が大きく数値に影響している」と言います。それぞれの数値の「背景」を解説してもらいました。
国の統計データを使って「見える化」した日本の女性の現在地。小熊英二・慶大教授が上・下2回にわたって、各地の歴史や社会的背景から読み解きます。
――15歳以上の人口に占める就業者や求職者の割合を示す「労働力率」で、男性を100としたときに女性の割合が最も低かったのは奈良でした。2015年の国勢調査で、奈良の専業主婦率は40・5%で全国1位。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考えに肯定的な県民の割合が高いのが特徴のようです。
まず女性の労働力率が低い傾向にある地域というのは、東京や大阪など大都市に通勤している人たちが居住するベッドタウンです。奈良、兵庫、神奈川などがこれに当たります。
なぜか。そうした地域には専業主婦が多いのですが、専業主婦は夫の稼ぎが良くないとできません。高所得の男性は大都市に多いので、その郊外に専業主婦が多くなる。
――一方、労働力率の男女格差が最小だったのは高知でした。一見、女性の社会進出が進んでいるように見えますが、高知県議会議員に占める女性比率は5・4%で、全国で42番目の低さです。
一般的な経済学では、教育などの「人的資本」が高いほど高賃金が得られる、と説明しますが、日本はそうなっていない。女性は学歴が高い方が労働力率が低いという、米国や英国とは逆の傾向にあります。
反面、先ほど挙げた奈良、兵…

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