北欧はお手本にならない? 男女格差、解消で問われる「ある問題」

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歴史社会学者、小熊英二・慶大教授が解説するジェンダーギャップ(下)

 都道府県ごとに、政治や経済など各分野でジェンダーギャップ(男女格差)がどのくらいあるのか。朝日新聞は、国の統計データを使って数値化し、女性の現在地の「見える化」を試みました。

 歴史社会学者の小熊英二・慶応義塾大学教授は、その結果から、日本の女性進出が進まない構図を、「大企業正社員と郊外型専業主婦を中心とした『大都市圏型』」と「労働集約型の製造業か介護・福祉を中心とした地縁・血縁の『地方圏型』」の2種類に大別できると言います。

 こうした構図を無くす手立てはあるのでしょうか。さらに小熊教授に解説してもらいました。

国の統計データを使って「見える化」した日本の女性の現在地。小熊英二・慶大教授が上・下2回にわたって、各地の歴史や社会的背景から読み解きます。

 ――政治、経済、教育のあらゆる分野で女性比率をもう少し高められたら、と思うのですが。

 それは「どういう社会にしたいか」というビジョンにかかわってきます。

 たとえば仮に、同一労働同一賃金になったとしましょう。

 現在の日本は、仕事の中身ではなく、正規か非正規か、あるいは企業の規模で賃金が決まっている。同一の仕事なら同一の賃金ということになれば、大企業と中小企業の差がなくなって、正規と非正規の差もなくなる。企業間の労働移動も簡単になり、高学歴の女性も賃金の高い職種に就きやすくなるかもしれません。

 これは一つの「理想」の形ですが、結果的に別のかたちで格差が開いて、失業率は高まることが予想されます。

 ――それはなぜですか。

 大学院を出て専門能力が高く、高賃金の職に就ける人ほど、高い給料がもらえる社会になるからです。

 いまの日本は、大学院を出ていなくても、専門能力がなくても、中堅以上の企業で勤続年数を重ねれば、それなりの賃金が得られる。しかし、同一労働同一賃金になったら、学位がなくて専門能力のない人は、大企業で勤続年数を重ねていても高い賃金は得られなくなる。

 また日本で今、飲食業やサービス業などを中心に、中小企業や非正規の職が潤沢に提供されています。しかし、同じ職なら中小企業であろうと大企業であろうと、正規であろうと非正規であろうと、同じ賃金だという社会になったらどうなるか。おそらく、いまの中小企業や非正規雇用の仕事はかなり減り、徹底的に省力化した社会になるかもしれません。

 なぜかといえば、こうした社会は、人件費が高くなるからです。中小企業や非正規であるからという理由では、賃金を低くできないからです。

 たとえば、コンビニや牛丼店などは無くなるかもしれません。お昼ご飯はサンドイッチを買って食べて、レストランに行くなら3千円以上のディナーしか無い、といった社会になるかもしれない。いまの西欧や北米両海岸は、それに近い傾向がありますね。

 図式的に言えば、同一労働同一賃金の社会になれば、女性でも高学歴の人は、高いステータスの職に就いて、高収入を得られる社会になるかもしれない。しかし、学歴間の格差が開く可能性がある。そして、中小企業や非正規の低賃金の職が減って、失業率が上がるかもしれません。

 米国は、女性の管理職比率は4割を超えていますが、女性間での格差もすごい。女性でも「超エリート」の人がいる一方、下は生活が大変で、失業率も高い。

 ――北欧などの国ではうまくいっているように見えます。

 スウェーデンは、医療や福祉…

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男女格差が先進7カ国で最下位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[記事一覧へ]