ロシアよ、兄弟を殺すとは 「カラマーゾフ」翻訳の亀山郁夫さん

有料会員記事

[PR]

亀山郁夫さん(寄稿)|ロシア文学者

 ロシアのウクライナ侵攻は、終わりが見えない。この世界から悪や暴力はなくならないのか。人間の根底には何があるのか。文学の言葉を手がかりに、ロシア文学者の亀山郁夫さんに寄稿してもらった。

かめやま・いくお

1949年生まれ。名古屋外国語大学学長。訳書に『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』など多数。

 二〇二一年十一月十一日、モスクワ市内にあるドストエフスキー博物館で開かれた生誕二百年の式典に出席したロシア大統領プーチンは、メッセージノートにこう書き記した。

 「ドストエフスキーは、ロシアの天才的な思想家にして愛国者」

 ロシア軍のウクライナ侵攻に先立つおよそ三か月半前のことである。

 メッセージを読み直し、改めて疑念にかられた。プーチンはなぜ、ドストエフスキーを「天才的な作家」とせず、あえて「天才的な思想家」と呼んだのか。ことによると彼はこの時、今回のウクライナ侵攻へ向けた、一種の「誓約」のごとき意味をこの一行に託したのではなかったか。

 最晩年のドストエフスキーは…

この記事は有料会員記事です。残り1587文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【無料会員限定】スタンダードコース(月額1,980円)が3カ月間月額100円!詳しくはこちら