「買い物難民」の救世主? 介護予防教室とIT企業が高齢者支援

大久保直樹
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 中山間地域などで課題になっている「買い物難民」対策として、鳥取市にある介護予防教室が、高齢者らのインターネットを使った買い物支援に取り組んでいる。IT企業と連携して方法や課題を検証。将来的なサービス展開に向け、試行を続けている。

 取り組みを進めるのは、山陰両県を中心に介護予防教室などを手がける「さんびる」(松江市)と、地元スーパーや飲食店と連携したネット配送サービスを展開する「アクシス」(鳥取市)。買い物に困っている高齢者を、両者の強みを生かして支援しようと、コラボを始めた。

 「さんびる」が鳥取市内で毎週開いている教室の中で、参加者は教室スタッフを通じてアクシスのネット宅配「トリスト」を使い、日用品や食品などを注文。商品は1週間後に教室に届き、教室の送迎サービスに併せて商品も自宅前まで運んでもらう。

 3月11日に同市の高齢者福祉センターを訪れると、教室の参加者たちは運動機能を向上させるための体操に汗を流した後、スタッフと一緒に果物や乳製品、日用品の写真が並ぶ画面をパソコンで見ながら注文していた。

 教室には前の週に注文した商品が届けられ、トイレットペーパーやジュースなどを受け取った。決済はクレジットカードや電子マネーではなく、その場で現金払いだ。1月19日の初回から、これまでに延べ30人が利用。当初は3月までの予定だったが好評で4月以降も続けている。

 教室の送迎支援があるため、米や牛乳など比較的重い食材やかさばる商品の利用が多いという。スーパーと連携し、取り扱う商品が約1500種類と豊富な点も好評だ。市内で夫婦2人暮らしの主婦(87)は注文していた料理酢を受け取り、「重いものはなかなか自宅まで運べない。とても便利です」と話した。

 鳥取県内の山間部から111集落を抽出した県実態調査によると、各集落の高齢化率は2011年の40・8%から昨年は49・8%に上昇した。独居世帯の割合も19・1%から27・4%に増加。そんな中、集落に住み続けるために必要なものを聞くと、多くの人が配達や地域商店の運営、移動販売などの「買い物支援」を挙げた。

 ネットを使った買い物は有効な手立ての一つだが、さんびる健康福祉部鳥取事業所の高木慎也所長は「IDやパスワードの話をしただけでそっぽを向かれる場合もある。高齢者にとって、パソコンやスマホは非常にハードルが高い」と指摘する。

 健康長寿には、運動に加えて食事や栄養バランスも不可欠。日々の食事を支える買い物の重要性は高いといい、高木所長は「公民館などで運動や買い物などさまざまなサービス、機能をつなげていけば、そこが暮らしの拠点にもなる」。今回のケースをモデルに、将来的な取り組みの広がりに期待を寄せる。

 当初、両者のコラボは3月末までの予定だったが当面継続し、運営面の課題や改善点などを検証していくという。「アクシス」バード事業部の梶岡大晃部長は「実際に使ってからは毎回注文してくれるようになった方もいるなど、一定の成果が見えてきた。今後は自治体とも連携しながら、中山間地域の買い物支援につなげていきたい」と話している。(大久保直樹)

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