円安による輸入品の値上がりに消費者から悲鳴が上がり、政府も大規模な物価対策に乗り出す。しかし、日本銀行は28日、円安の原因となっている金利抑制策を強化する方針を決めた。このままでは、かつてない勢いで円安が進み、止まらなくなるのでは。そんな「日本売り」を懸念する悲観論も市場で聞かれるようになってきた。かつて元モルガン銀行東京支店長として「伝説のディーラー」と呼ばれたこともある市場のプロで、元参院議員の藤巻健史氏はその代表格だ。円安の行方や日銀の対応について話を聞いた。
――急激な円安はなぜ起きたのですか。
「三つ要因がある。第1に日本の経常収支が赤字になってきたこと、第2に日米金利差が開いてきたこと。二つが同時に円安方向のトレンドに傾いたのは初めてだ。市場参加者にとってこれほどわかりやすい市場はない」
「第3にこれから米国で金融の量的引き締めが始まる。これまで米国の連邦準備制度理事会(FRB)がやってきた出口政策は追加の緩和量を絞っただけ。ゆるやかにはなったが、まだ山を登っていた。しかし量的引き締めはいよいよ山を下ることを意味する。5月3~4日の連邦公開市場委員会(FOMC)で量的引き締めの方針が決まれば市場の景色はすっかり変わるだろう。ドルの争奪戦が始まり、円安がさらに深刻な水準まで進む」
――どのくらいまで?…

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