過重労働で適応障害 名前や顔を出して訴えた高校教諭がいま思うこと
2017年夏。西本武史さん(34)は、大阪府内の府立高校で働き始めて2年目を迎え、かつてないほど追い込まれていた。
世界史の授業、1年生のクラス担任、卓球部とラグビー部の顧問。さらに、夏休み期間中にオーストラリアで予定されていた生徒の語学研修の準備が加わった。
現地の高校や旅行会社との交渉、生徒や保護者の相談への対応、しおりや資料の作成。遅くまで学校に残り、家にも仕事を持ち帰った。ひと月当たりの時間外労働時間は、150時間、120時間と続いた。
過重労働の果てに…
「心身共にボロボロです」
「いつか本当に過労死するのではないかと考えると怖いです」
校長に何度もメールで訴えたが、取り合ってもらえなかった。
語学研修から帰国後、2カ月あまり休職した。その間に「適応障害」と診断され、18年2月から再び約1カ月半休職。その約1年後、高校の運営主体である大阪府の責任を問う訴訟を起こした。
「学校の先生の長時間勤務について、社会全体で考えてもらう裁判。正々堂々と戦おうと決意した」
大阪市内で開いた記者会見で、多くのカメラを前に言い切った。病気を抱える現役教諭が、勤務を続けながら「雇い主」を相手に裁判を起こす。それだけでも異例だが、実名と顔も明かし、訴える道を選んだ。
あれから3年。いま思う。自分の行動で、社会に何らかの「変化」をもたらせたのだろうか、と。
「よう死なんかったな」…
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- 【提案】
働きながら、現在の職場への訴訟を起こすことが、どれほどの覚悟か。適応障害の症状と戦いながら涙をぬぐい記者会見に挑む様子に胸がしめつけられる。自分のためではなく、全ての教員、子ども達のために行動を起こしている、このバトンをそのままにするわけに