33億円のティラノサウルスは新種か 恐竜化石の新説めぐり疑問も

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小堀龍之
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 映画でもおなじみの恐竜ティラノサウルスは、実は新種を含む3種に分けられる――こんな新説を、米国の研究チームが発表した。化石のデータを詳しく分析した結果というが、古生物学者の間には疑問を投げかける声もある。

 「新しい博物館の目玉は、世界的に有名な『スタン』です」

 アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ文化観光局は3月23日、3年後に完成する博物館に関する声明を出した。そこで明かされたのが、スタンと呼ばれる全長約12メートルのティラノサウルス化石を展示することだ。

 スタンは、ほぼ全身がそろった約6700万年前の化石で、複製が日本など各地にある。化石の実物は20年10月に米国で開かれた競売で、謎の人物に約3180万ドル(当時の為替で約33億円)で競り落とされ、行方が注目されていた。

 このスタンが実は新種のティラノサウルスだという説を、米国の研究者グレゴリー・ポール氏らが今年3月に科学誌エボリューショナリー・バイオロジーに発表(https://link.springer.com/article/10.1007/s11692-022-09561-5別ウインドウで開きます)した。

 ティラノサウルスはこれまで、学名ティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus・rex、T・レックス)で知られる恐竜ただ1種だと考えられてきた。

 ラテン語でレックスは王という意味だが、新説は王に加え、女王(レジーナ)と皇帝(インペラトル)の名前を持つ2種を新種として提案した。

 チームは、スタンや「スー」などの有名な化石37体の骨の太さや長さ、歯のデータと、白亜紀の地層のどこから発掘されたかを比べた。

 そして化石の比較と、化石を含む地層のできた順序を研究する「層序学」を組み合わせ、これまで同じ種の個体差とされていた特徴が、別種の証拠だと結論付けた。

 スタンなど、新しい地層で発掘された大腿(だいたい)骨がきゃしゃなタイプについて、ティラノサウルス・レジーナ(Tyrannosaurus regina、T・レジーナ)と名づけた。

 一方、古い地層の頑丈タイプを、ティラノサウルス・インペラトル(Tyrannosaurus imperator)とした。スーはT・インペラトルという。従来のT・レックスは新しい地層で頑丈な大腿骨を持つタイプとした。下あごの前方にある切歯(前歯)の数が横から見ると1本でT・インペラトルの2本と異なるという。

 恐竜化石に詳しい岡山理科大学の林昭次准教授は「これまでに『ティラノサウルス・レックス』とされている骨格や歯の形態を見直すと、3タイプの異なるグループに分けることができるという発見はとても面白いと思います。しかし、別種として分けるかどうかは他のデータも増やして慎重に検討してもいいのではないか」と指摘する。

 たとえばエゾジカ、ホンシュウジカ、ヤクシカ、ケラマジカは、形や大きさが違うが、すべて同じニホンジカという種だ。

 もしDNAがわかれば、大きさや形の違いが年齢などによる個体差なのか、種の違いなのか区別できるが、恐竜のDNAは分解されてしまい残っていない。

 「今回の研究の弱点を挙げるとすれば、組織学的観点から年齢を推定しておらず、成長に伴う骨や歯の形態の変化を十分観察できていないことがあります」

 成長段階で体格や歯の形が変化するのは、現生の動物では一般的にみられる特徴で、ティラノサウルスも同じだった可能性がある。

 実際に、新説には批判も出て…

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