第89回「発言するほどロシアの術中」核の瀬戸際外交、専門家がみる米の過ち

有料記事ウクライナ情勢

ワシントン=高野遼
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 ウクライナ侵攻をめぐり、ロシアが核兵器の使用も辞さない構えをみせ、米国への牽制(けんせい)を続けています。核兵器を「脅し」に使う国が現れた場合、米国はどのような対抗策を考えてきたのか。核戦略の専門家である、米ジョージタウン大のマシュー・クローニグ教授に聞きました。(ワシントン=高野遼)

 ――ロシアがウクライナで核兵器を使う可能性をどうみますか。

 ロシアが実際に核兵器を使う可能性は低いですが、ゼロではありません。あるとすれば、数発の低出力の核兵器を戦場で使用して、敵を後退させようとするパターンでしょう。

 最も懸念しているシナリオは、ロシア軍が戦争に負けてウクライナから追い出され、プーチン大統領が自らの権力を失うことを心配した場合です。核兵器を使用してロシアに有利な条件を目指す可能性があります。

 ――ロシアが使う可能性がある低出力の核兵器とはどのようなものですか。

 広島に投下された原爆の威力は15キロトンでした。爆発の規模がTNT火薬換算で1万5千トンという意味です。

 一方、ロシアの低出力核兵器の威力は1キロトン以下なので、広島の原爆と比べると15分の1以下の威力です。たとえばこれが、ワシントンのホワイトハウスで使われた場合、2キロ離れたジョージタウンは全く無傷で済みます。

 プーチン氏はこの核兵器を限定的に使うことができます。戦場で相手の戦車に対しては破滅的な影響を与えますが、大災害を引き起こすほどにはならない。(ロシア軍が包囲しているウクライナ南東部の)マリウポリのような小規模な都市に使うことも考えられます。

 ただ、もし核兵器を使用すれば第2次世界大戦以来となる。世界はキノコ雲を見ることになり、恐怖を与える。核戦争の恐れを高め、ウクライナや北大西洋条約機構(NATO)に引き下がる動機を与えます。

 核戦争はロシアが望む展開ではない、といいます。プーチン氏に核のエスカレートに踏み出させないために、米国は何ができるのでしょうか。記事後半では、米国の台湾への対応のポイントについても語ります。

 ――ウクライナでロシアが核兵器を使ったら米国はどう対応するでしょうか。

 難しい判断となります。核兵…

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