ウクライナと戦争 たった1本の旋律が、誰かの生き抜く力に

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日曜に想う 編集委員・吉田純子

 先月、米国の著名な歌劇場の関係者から、とあるウクライナ人歌手の取材を打診された。侵攻が始まった直後に降板が発表されたロシア人歌手、アンナ・ネトレプコさんの代役を務めるという。

 音楽的には十分納得のいくキャスティングだが、モヤモヤした。いま私はこの人から、ひとりの芸術家としてではなく、ひとりのウクライナ人として、話を聞くことを期待されているのだろう。そう思うと、心が違和感でざらついた。

 戦争が芸術上の選択を支配する。そんな時代はもう、過去のものだと思っていたのに。ロシアとフランス、双方の国で音楽監督を務めていたロシア人指揮者は、「どちらかを選ぶことなどできない」としていずれの職をも辞した。そもそも「個」の尊厳を踏みにじる戦争において、その責任を「個」に負わせることなど、一体どこまで可能なのだろう。

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