第1回なぜ警官は弟を撃った ドゥテルテ氏の麻薬戦争の闇、問い続ける姉

有料会員記事

マニラ=宋光祐
[PR]

 警官たちはあの日、なぜ弟を撃ったのか。いつか向き合って聞いてみたい。

 クリシャ・ロセロ(28)は弟キアンの死から5年が近づく今、そう思う。答えを聞ければ憎しみが和らぎ、警官たちを少しは許せるかもしれないから。

 キアンは2017年8月16日、フィリピンのマニラ首都圏カロオカンにある自宅近くの路地で男性警官3人に射殺された。地元の高校に通う17歳だった。

 ロセロがキアンの死を知ったのは事件の翌日だった。1カ月前に次男を出産したばかりで、実家近くにある夫の両親宅で静養していた。

 「キアンが撃たれた!」。電話してきたのは、キアンを自分の息子のようにかわいがっていた叔父のランディ(44)だった。入院先を聞くと、病院ではなく実家に向かうように言われた。弟はもう棺(ひつぎ)の中で眠っていた。

【連載】ストロングマンの呪縛 フィリピン大統領選

過激な言動で「ストロングマン」と呼ばれたドゥテルテ大統領はフィリピン社会に何を残したか。強権的な政治にほんろうされた人々の姿から、残りわずかとなった6年の任期と9日に迫る大統領選への影響を検証します。

警官が現場で「処刑」

 警官たちは事件後、「(キアンは)麻薬の運び屋だった」「先に銃を撃って抵抗した」と正当防衛を主張した。

 フィリピンでは16年6月末に大統領ドゥテルテが就任して以降、麻薬犯罪の容疑者が抵抗した場合には、警官が容疑者を殺しても罪に問われなくなっていた。

 ドゥテルテは「麻薬撲滅」を…

この記事は有料会員記事です。残り2526文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【無料会員限定】スタンダードコース(月額1,980円)が3カ月間月額100円!詳しくはこちら

連載ストロングマンの呪縛 フィリピン大統領選(全3回)

この連載の一覧を見る