デザイナーの氏名を冠したブランドの商標登録が認められない事態が続いていることを受け、特許庁は4月、外部有識者らに委託した調査研究の報告書を公表した。報告書は国内外の法制度の調査や企業のニーズ、海外の登録状況との比較もふまえ、現状を見直すことが望ましいと指摘した。今後、氏名ブランドの商標登録が認められやすくなるよう法律が変わる可能性が出てきた。
タケオキクチなど、氏名を看板にするブランドはファッション界で数多い。しかし、2019年にジュエリーブランド「KENKIKUCHI(ケンキクチ)」、20年にパリ・コレクションで発表を続ける「TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.(タカヒロミヤシタザソロイスト.)」と、商標登録を拒絶した特許庁の判断を支持する知財高裁判決が相次いだ。
特許庁が登録を拒む根拠が商標法4条1項8号だ。人格権保護のため「他人の氏名」を含む商標は、その他人の承諾なしには登録を認めないと定める。同庁は電話帳「ハローページ」などで検索し、商標中の氏名と同じ名前の他人が存在するかを確認する。例えば「ケンキクチ」は、「菊地健」「菊池憲」など、同じ発音とみられる人々全員からの承諾が必要という理屈だ。
「マツキヨ判決」の後、始まった調査研究
一方、昨年8月にドラッグストアの「マツモトキヨシ」が、テレビCMなどで使うフレーズを音の商標として登録するよう求めた裁判で、知財高裁がマツキヨ側の主張を認めた。ここでも「同じ読みの別の人物を連想させるかどうか」が争点になったが、判決では、マツキヨが全国的に著名で、フレーズも広く知られていることから「一般に人の氏名を指し示すものと認識されるとはいえない」と判断された。
この判決の翌月、特許庁は…