電話帳に同姓同名いればダメ?商標登録拒絶されたケンキクチは考えた

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聞き手 編集委員・後藤洋平
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 ファッション界を中心に、デザイナーの氏名を含んだブランドの商標登録申請が特許庁に相次いで拒絶される状況が続いている。根拠は、商標法の4条1項8号が「他人の氏名」を含む商標を、同姓同名の他人の承諾なしに登録できないと定めていることだ。「他人」が著名かどうかは判断の基準にならず、特許庁は電話帳「ハローページ」で同姓同名の人物が存在すれば認めないという姿勢だ。アルファベット表記での申請は、漢字だけでなく読み方が同一と推察されるだけでも登録がまず不可能だ。

 ロックバンド「エアロスミス」のスティーブン・タイラーら著名人も愛用するジュエリーブランド「KENKIKUCHI(ケンキクチ)」は2018年に拒絶され裁判に持ち込んだが、翌19年に知財高裁が特許庁の判断を支持。上告も最高裁が不受理とした。デザイナーの菊地健さん(44)は模造品や模倣品対策として申請したというが、こうした結果に「日本ではブランドが運営できない」と絶望したという。

 昨年秋、特許庁「氏名を含むブランド名の保護に欠けるとの指摘がある」として学識経験者や弁護士ら5人の委員会を設置。これまでの登録の可否や、欧米や中韓の法律事務所などに意見を聞き、4月に公表された報告書で「見直しの検討が必要となる段階に来ている」と結論づけ、今後は法改正の議論に入る可能性が高まっている。当事者の菊地さんに、実情を聞いた。

 ――商標法に対する特許庁の報告書は、4条1項8号について、登録にあたって「同姓同名の他人」に一定の知名度があるかどうかを考慮すべきではとの意見も記されました。

 「それは本来、当たり前のことだと思います。僕の場合はイーグルのロゴの中にアルファベットで氏名の文字列を入れてダメだった。他の『キクチケン』さんが著名かどうかは関係なく、『とにかく同じ読み方の名前の他人が存在するからダメだ』と」

 ――今回の調査では、米国や中国韓国、欧州と比較しても厳しすぎるという指摘がありました。現行法で運用を変えるとしても、限定的になると結論づけ、法改正が必要だとの見方を示しています。

「同じ読みの人、全員から許可もらう」も…

 「それはそうだと思う。結局今のままだと日本では、ブランドが作れないんですよね。登録申請を拒絶されて、裁判でも認めてもらえなくて、よく分かった。じゃあ、日本でブランドをして、日本に税金を払う意味ってなんだろうと思った。外国で会社を立ち上げて運営したほうがよくない? ばかばかしいですよね。偽物も作られるし。どう考えても、頭が固いというか、不合理な判断だなという思いでした。『同じ読みの名前の人』が少なくとも四十数人いるというので、じゃあ俺がその全員から『私が登録してもいいか許可をもらってこようか?』って言いました。同意してもらえればいいんでしょう、と。もしくは、他の四十数人も俺のロゴを使ってもいいですよ、と(笑)。全然違う名前の人が、俺の作品を模造して、俺の名前を刻んで売ってるぐらいなんですから。現状では」

 ――弁護士費用などは、どの…

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