金融庁「甘く見られた」 地銀システム障害、明かされなかった報告書
経済インサイド
トラブルは、間の悪いことに新年度を翌週に控えた3月26日、土曜日の午前11時すぎに発生した。ツイッター上には瞬く間に利用者の戸惑いの声があふれた。
「銀行に行ったらシステム障害でお金おろせなかった。ピンチ」
「ネットバンクもATMも使えない」
「給料日翌日なのに悲しい」
このとき、常陽銀行(茨城)や山口銀行など八つの地方銀行とローソン銀行で、システム障害が同時に起きていた。
通帳やカードをATMに取り込まれたままの人もいた。障害を起こした計9行の支店は北関東から九州まで約1千店。昨年来、大規模なシステム障害を繰り返していたみずほ銀行の支店数の2倍以上だ。なぜバラバラの銀行で一斉に障害が起きたのか。
午後になって、ようやく原因が見えてきた。
かぎを握っていたのは、日本IBMと同社から昨年分社したキンドリルジャパンだった。IBMは銀行向けのシステムの設計、キンドリルはそのシステムの運用を担当していた。
一見関係のない全国各地の銀行も、そのシステムはキンドリルが管理する1カ所のデータセンターのサーバー上で動いている。そこで何らかのトラブルが起きたことが、各行で同時に障害が起きた理由だった。
復旧作業は夜通し続き、正常化は翌27日朝にずれ込んだ。
だが、これだけのトラブルの原因や経緯について、両社は「改めて報告する」とし、会見などは開かなかった。それから約1週間後の4月5日、HP上に両社が載せた発表文が、さらに波紋を広げることになる。
「今回の障害は一部の電源設備が故障したことによるものです」
発表文で原因への言及はこの一文だけ。それは当初から周知されていた内容で、新しい情報でもなかった。さらに、障害の経緯には触れもしなかった。
「『金融庁にシステムはわからない』って甘く見られている感じがする。彼らが答えるべきことはまだいくつもある」
ある金融庁幹部は、簡単すぎる発表文に怒りをあらわにした。そう思うのも無理はなかった。じつは、両社は発表前日の4月4日、顧客である銀行側には、別の詳細な報告書を提出していたのだ。朝日新聞が入手したその報告書には、関係者から「恥ずかしい」との声が漏れるほどのお粗末な原因や経緯が詳しく記載されていた。
報告書によると、システム障…
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