「言論の自由、大切さ感じた」 朝日新聞阪神支局襲撃事件から35年

宮島昌英、熊谷姿慧、真常法彦、新屋絵理
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 兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局に男が侵入し、散弾銃で小尻知博記者(当時29)ら2人を殺傷した事件から3日で35年がたった。この日、同支局の1階に小尻記者の祭壇が設けられ、訪れた市民らが遺影に手を合わせた。

 新型コロナウイルス対策で記帳台は設けず、3階にある事件資料室の一般開放も見送った。

 5年ぶりに訪れたという同県尼崎市の男性(77)は、「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻のニュースに触れ、言論と報道の自由の大切さを強く感じた」。毎年訪れるという西宮市の高本東行さん(79)は、「まさかあんなひどい事件が、という気持ちが今もぬぐえない。小尻さんの命を無駄にしないようにマスコミは真実を伝え続けていってほしい」と話した。

 広島県呉市にある小尻記者の墓ではこの日午前、朝日新聞大阪本社の杉林浩典・編集局長らが手を合わせた。阪神支局での勤務経験があり、この事件の取材も担当した杉林局長は「犯人がわからない悔しさを改めて感じている」と報道陣に述べた。また、ウクライナ侵攻を念頭に「自国の正義を振りかざし隣国を侵略する戦争も起きているが、多様な考えを語り合える社会は民主主義の基本だ」とも語った。

 事件は1987年の憲法記念日の夜に発生。目出し帽をかぶった男が支局で散弾銃を発砲し、小尻記者が死亡、犬飼兵衛(ひょうえ)記者(当時42、2018年死去)が重傷を負った。「赤報隊」を名乗る犯行声明が報道機関に届いたが、未解決のまま02年5月に時効が成立した。(宮島昌英、熊谷姿慧、真常法彦、新屋絵理)