養蚕の伝統建造物の保存地区に残る赤岩神社 群馬・中之条町

角津栄一
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 八ツ場ダムから白砂川の渓谷美を楽しみながら国道292号を車で10分ほど北上すると、対岸の山腹に小さな集落が見えてくる。群馬県中之条町の赤岩地区だ。家並みを見下ろす山中には、赤岩神社がある。

 旧六合(くに)村の赤岩地区には明治から昭和期の養蚕農家の建物が数多く残り、2006年に県内で初めて、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定された。建物は梁(はり)が外壁より前に張り出た「デバリ」(出梁)が特徴的だ。

 集落内の道沿いには、石垣を築いた屋敷や土蔵が並ぶ。養蚕が盛んだった名残でもある3階建ての家もある。道幅は狭く、車1台分ほど。庭の花や木々は手入れが行き届き、歩いて散策するのがおすすめだ。

 集落の中ほどには、木造3階建て土蔵造りの赤岩湯本家住宅(町指定文化財)がある。2階には、開国論者として幕府に追われていた蘭学者の高野長英をかくまったとされる「長英の間」が残されている。

 家並みが途切れた辺りに、赤岩神社の鳥居と石段が見えてくる。ここから300メートルほど急な斜面を登ると、拝殿が姿を現す。その背後の覆屋内に本殿が鎮座している。

 本殿は幅1・5メートルほどと小ぶりだが、土台部分から軒裏まで極彩色の彫刻で埋め尽くされている。群馬県の「近世寺社総合調査報告書」によると、花鳥や龍、鬼など多彩な意匠が確認されている。建造年は棟札や建築様式から1819(文政2)年とみられる。棟札に彫物師の記載はない。本殿は一般公開していない。

 集落の入り口には、地域住民で運営する案内所「赤岩ふれあいの家」がある。氏子総代で、町教育委員も務める湯本茂夫さん(72)は「建物や土蔵は指定された当時の外観を守っています。地域のみんなで定期的に集落内の草刈りや除草作業をして集落の景観保全に努めています」と話す。

 白砂川の対岸からは、家並みと周囲に田畑が広がる赤岩集落の全景を望むことができる。

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 「近世寺社総合調査報告書」は、奈良文化財研究所ホームページのデータベースで閲覧できる。(角津栄一)

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 関越道渋川伊香保インターから車で約1時間半。鉄道はJR吾妻線長野原草津口駅が最寄り。国道292号を北上すると、旧群馬鉄山の遺構「旧太子駅ホッパー棟」(国登録有形文化財)がある。赤岩ふれあいの家は(0279・95・3008)。