熱海市伊豆山にカフェオープン「住民がつながる場所に」

黒田壮吉
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 静岡県熱海市土石流災害から3日で10カ月。大きな被害が出た伊豆山地区の国道135号沿いの逢初橋の近くにコミュニティーカフェ「あいぞめ珈琲(コーヒー)店」がオープンした。地元のボランティア団体が運営し、「災害で疎遠になった住民らがつながる場所になれば」と願う。

 店へと続く階段を上がっていくと、正面の窓から海が一望できた。入り口部分に扉はない。店内の壁には、復興を願うメッセージが書かれた木製のコースターが飾られていた。

 カフェは、地域住民が使う共同浴場を備える伊豆山浜会館の4階にある。元々、床屋だった空きスペース(約60平方メートル)を活用し、約20席を用意。コーヒーやフレンチトーストなどが楽しめ、4月中旬の開店以来、地域の住民らが集っている。

 運営するのは、昨年10月に住民らが立ち上げたボランティア団体「テンカラセン」。災害直後から、地域の高齢者の生活支援などをしてきた。ただ、活動を通じて、住民から「災害で人や地域との関係が分断された」などの声が聞こえてきたという。同団体の代表で伊豆山出身の高橋一美さん(45)は「みんなが気軽に集まって話せる場所が必要だと感じていた」と話す。

 こうしたなか、カフェづくりのプロジェクトが昨年12月にスタート。クラウドファンディングを立ち上げて資金を募り、目標以上の480万円を集めた。ソファなど一部の家具は、昨年に閉館した旧ホテルニューアカオから寄贈を受けた。階段に昇降機を設置するなど、バリアフリー設計を取り入れ、自分たちで約4カ月工事するなどし、開店にこぎ着けた。

 同店では、他の来店客が金券として利用できる「つながるチケット」(1枚500円)を販売。利用者がお礼のメッセージを書き込み、店内に掲示する。高橋さんは「人と人のつながりを実感できる仕掛け。伊豆山への思いを共有できれば」と話す。

 店を切り盛りするのは団体副代表で店長の中野裕基さん(32)だ。主に1人で営業しているが、「お客さんがいろいろと手伝ってくれて助かっている」という。「観光客も含め、人と人が出会える場所になれればうれしい」

 市によると、102世帯193人が市内外の応急仮設住宅で暮らす。高橋さんは「ばらばらになった伊豆山地域が一つになるきっかけになれば。今後もイベントなどを企画していきたい」と話す。

 水曜定休で、営業時間は午前11時~午後6時を予定。(黒田壮吉)