第5回ラスト1周、一対一で王座を決めろ 追いかけるホンダがつかんだ奇跡

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有吉正徳、田村隆昭
写真・図版
デザイン・荻野史杜
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 「WINNER TAKES ALL(勝った方が、全てをその手に)」

 2021年12月、F1最終戦となったアラブ首長国連邦でのアブダビ・グランプリ。

 舞台となるヤス・マリーナサーキットには、こんな宣伝文句が記されたポスターが貼られた。

 レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン(24)とメルセデスのルイス・ハミルトン(37)。

 王座を争う2人が、ヘルメット姿でトロフィーを挟んでにらみ合うように配置されている。「最終決戦」をあおる、さながらハリウッド映画の趣だ。

 ここまでの21のレースで積み重ねたポイントが同じゆえ、相手より先にゴールすれば勝ち。レースの原点に立ち返った「大一番」を前に、緊張感は高まる。

 ホンダのマネージングディレクター山本雅史(58)とテクニカルディレクター田辺豊治(62)は現地で。

 そして、F1車の動力源「パワーユニット」の開発を率いてきた浅木泰昭(64)は本田技術研究所「HRD Sakura」(栃木県さくら市)で。

 それぞれが終幕へ向けて動いていた。

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アブダビGPの開幕前日。アルファタウリ・ホンダのガスリー(左)の背中に手を当てるホンダの田辺豊治テクニカルディレクター=ホンダ提供

 F1では決勝スタート時の順番を決めるため、前日に予選を行う。競うのは1周のタイム。

 悩みどころは3種類あるタイヤのどれを選ぶか。それによって決勝スタート時のタイヤの種類が決まるルールがあるからだ。

 フェルスタッペンは、三つのうちの中間の性能と言える「ミディアム」タイヤで決勝に臨む戦略だ。

 だがブレーキの際にタイヤを傷め、予選途中で、性能はいいが寿命が短い「ソフト」にはき替えざるを得なくなった。強心臓で知られるフェルスタッペンの、珍しいミス。

 山本も「初めてのタイトル挑戦に、さすがに緊張しているのか」と思わざるを得ない。

 ミスをした方が負けという張り詰めたムードの中だったが、なんとか予選1位を獲得した。

 「まずいなぁ」

 NASA(アメリカ航空宇宙…

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