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あの日「カズワン」に何が起きたのか カズスリー甲板員の混乱と後悔

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佐野楓 戸田拓
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 「カムイワッカの滝の上にクマが横になっていた」

 北海道・知床半島沖をめぐる観光船「KAZUⅠ(カズワン)」から無線で連絡が入ると、同船の30分後に出航した観光船「KAZUⅢ(カズスリー)」の船長は「了解」と返した。

 4月23日午前11時ごろのことだ。このとき、カズワンは半島先端の知床岬までの往復3時間コースを航行中。後方のカズスリーは、途中で折り返す往復1時間のコースを航行していた。

 「カムイワッカの滝」は、船上から野生のヒグマを見ることができる絶好のスポットだ。しかし、カズスリーが到着した時にはクマは姿を消していた。

カズワンの出航準備を手伝い、同じ会社が運航する後続のカズスリーで船上ガイドをした60代の男性が朝日新聞の取材に応じた。その話から、当日の状況が新たに判明した。乗客の中には、カズスリーからカズワンへと乗船を変更した小学校低学年の男児と母がいて、手を振る2人の姿が今も目に焼き付いていると言います。

 その直後、カズスリーの甲板員で船上ガイドの男性は天候の変化に気づいた。

新たに判明した当日の状況

 折り返し地点の滝付近でUターンしたとき、大量の水滴が突然、降りかかった。普段は見られない現象だった。北西の強風にあおられて舞い上がったしぶきが、雨のように降ってきたのだ。波は穏やかだったが、知床連山の上には雲がかかっていた。

 カズスリーは予定通り、午前11時40分ごろにウトロ漁港(斜里町)に戻った。男性は十数人の乗客を降ろし、船の窓にかかったしぶきの跡を掃除した後、事務所に戻った。

 風が次第に強くなっていた。正午過ぎ、男性は事務所にいた従業員らと話し合い、午後の便を欠航することにした。予約客に電話したり、集まり始めた客に欠航を伝えたりした。

 気がかりは、まだ航行中のカズワンだった。荒天の予報が出ていたことから、男性は23日の朝、カズワンの豊田徳幸船長に「午後から波が高くなるから気をつけろ」と忠告していた。

 「港に戻るまでに相当時間が…

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