「かわいそうの感情は大切」だけど 生き物の最期を専門家と考えた

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 生きていく上で切り離せない生き物と人間の関係。病気の動物の安楽死外来種の駆除など、「かわいそう」にも思える現場に私たちはどう向き合えばいいのでしょうか。4月に開催した記者サロン「生き物の命の終わりを考える 『かわいそう』の現場から」で、専門家2人と現場を取材した記者が考えました。

 ゲストに招いたのは、村田浩一・よこはま動物園ズーラシア園長と、「野生生物と社会」学会会長の鈴木正嗣・岐阜大教授。朝日新聞デジタルで配信した連載「『かわいそう』の現場から」(紙面は「現場へ! 『かわいそう』を問う」として夕刊に掲載)を担当した矢田文記者、杉浦奈実記者と意見交換した。

安楽死 生と死のはざまの苦悩と責任

 連載では、感染症になったウサギを安楽死させた動物園に賛否の声が寄せられた出来事を取り上げた。老いて病気になったペットでも、安楽死が検討されるケースも増えている。長年、獣医師として動物園の現場と向き合ってきた村田さんは「平気で動物を殺している獣医師なんていない。地獄へ落ちていく覚悟もある」と命と向き合う重さを語った。

 ――安楽死についてどう考えるか。

 村田 総論的に語るのはすごく難しい。世界的には、動物園で安楽死を選択する場合は、世界動物園水族館協会(WAZA)のガイドラインに沿う。動物園だから種の保全は大切だが、個体の福祉(アニマルウェルフェア)も考えなければいけない。痛みや苦しみを取り除くことを重要視しなければいけないと言われている。

 すべての人の理解を得ることは難しいかもしれないし、100%科学が正しいとはいえないが、動物にとって一番良い最期をサイエンスとしても求めていくのが、動物を飼育し管理している者の義務ではないかと思う。動物に死を与えた個人が責任を負うのでなく、動物園という組織が動物倫理に関する委員会などを設け、全体で責任を負うべきだろう。

 ――ペットを安楽死させた、あるいはさせなかったことで悩み続ける飼い主もいる。この感情とどう向き合えばいいか。

 村田 私も飼っていた犬で同じような経験をした。安楽死させることはなかったが、死の直前まで苦しんでいる様子を見ているのがとてもつらかった。自らの手で安楽死させるべきだったかもしれないが、いずれにしても一生ひきずっていく苦悩なのは違いない。獣医師は、そのような苦しい判断に直面することが多い。

 平気で動物を殺している獣医…

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