自国を悲観「なぜウクライナを攻める」 両親に別れ、ロシアから出た

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イスタンブール=高野裕介
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 対独戦勝記念日を9日に祝うロシアに、ウクライナ侵攻がつくった「分断」の影が広がっている。侵攻を正当化するプーチン政権に多くの若者が絶望し、欧米の制裁により国力の維持も難しい状況だ。国際社会の信頼も失い、ロシアの孤立が深まっている。

 「兄弟国」とみなすウクライナへの残虐な侵攻を正当化し、ロシア軍の戦果を誇示するプーチン政権。そんな国の将来を悲観し、ロシアを離れる若者らが少なくない。

 モスクワで広告の仕事をしていたインナさん(31)は侵攻から約1カ月後の3月21日、トルコのイスタンブールに来た。モスクワの空港を出る際、フェイスブックインスタグラムなどのSNSアプリをすべて削除した。反政府的な書き込みが見つかると出国できなくなるとのうわさが広まっていたからだ。モスクワを飛び立ったトルコ航空機はほぼ満席だった。

 侵攻が始まった2月24日、頭が混乱した。「なぜウクライナを攻める必要があるの?」

 外国のサーバー経由でネットに接続する「VPN」を使い、ロシア国内では接続が制限されるSNSや欧米メディアのニュースを見ていた。ウクライナから伝えられる悲惨な写真や動画にショックを受け、10日ほどは何も手につかなくなった。ロシアに制裁が科されて経済は破壊され、若者の将来がなくなると直感した。外国企業を相手にしていた自分の仕事もすぐになくなるだろう。

 不安に拍車をかけたのが、自由にモノを言えぬ雰囲気だった。ウクライナで起こしたのは「戦争」ではなく「特別軍事作戦」。ロシア兵の士気が低いなどと口にすれば、何をされるかわからない。友人の記者は家宅捜索を受け、パソコンなどを押収された。「政権に批判的なことをすればいつ警察が来るかわからない。ロシアで暮らすことが恐怖でしかなくなった」

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