戦勝記念日、プーチン氏は国威発揚の場に 距離を置いてきた旧連合国

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 ロシアは5月9日、ソ連軍がナチスドイツに勝利した対独戦戦勝記念日を迎える。ファシズムに対する勝利を祝う式典には、かつてソ連とともに戦った英米仏の旧連合国や和解を求めるドイツなど欧米首脳が顔をそろえたこともある。だが、その記念日は近年、プーチン政権による国威発揚の場に。ウクライナ侵攻のさなかの今年の式典に外国首脳は招かれず、華やかさと裏腹にロシアの孤立を印象づけるものにもなりそうだ。

 戦勝記念日を前に、プーチン政権は国際的な批判へのいら立ちを際立たせる。

 ラブロフ外相は今月1日、「ヒトラーにユダヤ人の血が流れていた」と発言。ロシア外務省は抗議したイスラエル政府に反論する声明を発表した際に、「ラトビアのレビツ大統領もユダヤ系の出身だが、自国で(ナチの)武装親衛隊が復権するのをうまく隠している」と関係のない第三国元首の「出自」まで持ち出した。

 ロシアはウクライナ侵攻の目的を同国の「非ナチ化」とする。だが、同国のゼレンスキー大統領はナチスに迫害されたユダヤ系の出身だ。矛盾を問われたラブロフ氏は「(その指摘は)意味がない」と反論。「賢明なユダヤの民衆は、最も激しい反ユダヤ主義者はユダヤ人だと言っている」とも述べた。これに対し、イスラエルは「最低レベルの人種差別だ」(ラピド外相)と批判した。

 ラトビアなどバルト3国や東欧各国は冷戦後、第2次大戦時のソ連軍の記念碑を相次ぎ撤去した。声明がいきなりラトビアに言及したのは、イスラエル政府が「ユダヤ人大虐殺(ホロコースト)を止めた兵士たちへの侮辱」に抗議しなかったと批判するためだった。

 結局、プーチン大統領が5日、自らベネット首相に電話して謝罪し「論争」を収めたが、それまでロシアのウクライナ侵攻への非難を控えていたイスラエルにしつこくかみついた声明には、深まるロシアの孤立感がにじんだ。

 5月に入り、ロシア各地で9日の対独戦勝記念日を祝う準備が進む。対独戦での旧ソ連の犠牲者は2600万人以上に上る。多くの人が家族、親戚に戦没者を持つ。多大な犠牲を払って達成したファシズムへの勝利は、ソ連時代の社会主義に代わり国民統合のシンボルになった。

 だが、プーチン氏は「勝利の栄誉」を軍事力の誇示や政権の求心力を高める手段に使うようになった。

 プーチン氏は2014年の戦…

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