第1回近づく「再エネ敗戦」、逃した変革の好機 グリーン成長の虚実に迫る

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土居新平、北川慧一
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 強烈な風が、日本海に白波をたてながら秋田に吹きつける。受け止めるのは、洋上に林立する巨大な風車だ。3本の白い羽根がゆったりと回転し、そのエネルギーが電力に変わる。羽根の最高到達地点の150メートルは、40階建ての超高層ビルに匹敵する――。

 日本初となる大型の洋上風力発電が今年末、現実の姿になる。秋田港と能代港で計33基が稼働を始める。さらに8年ほど後には、もっと大きな風車が周囲の海に並び立つ。その数、103基。発電規模は原発1基分にも相当する。近くの2海域でも計画が進む。

 2050年のカーボンニュートラル(脱炭素)を掲げる日本政府にとって、洋上風力は温暖化対策と経済成長を両立させる切り札だ。

 環境対策を成長の機会ととらえる「グリーン成長」は、コロナ後を見据えた世界の潮流となっている。

 それは、世界を豊かにしてきたはずの資本主義が直面する「二つの壁」を、同時に乗り越える試みだ。ひとつは富を生み出すスピードが鈍ってしまった低成長。もうひとつは、逆に経済の拡大が環境に負荷をかけすぎたことによる地球の危機である。

 政府は20年末にまとめた「グリーン成長戦略」で、洋上風力を14ある「重要分野」の最初に位置づけた。40年には最大4500万キロワットの導入をめざす。世界的な脱炭素の流れにあわせた目標だが、その未来は約束されたものではない。

育たない風力関連産業

 大森建設(能代市)は風力発電建設で、海底の基礎が流されるのを防ぐ工事や送電線の整備を担った。「日本で最初のプロジェクトに、地元として参画したいと思った」と大森啓正専務(34)。地元企業などと新会社をつくり、現場に作業員を運ぶ輸送船(CTV)2隻も運航。船員12人を雇う。

 風力発電は数万点の部品を使い、20~30年稼働する。地域で関連産業が育つ効果への期待も大きい。秋田のように、人口が大きく減り続けている地域ではなおさらだ。

 しかし、秋田、能代両港の事業を手がける秋田洋上風力発電の岡垣啓司社長(51)は「主要部品はほぼ海外製。日本企業を選ばなかったのではなく、残念ながら選択肢がそもそもなかった」と話す。風車はデンマークのベスタス製。発電機が入るナセルや羽根、支柱は欧州や中国製を船で運んできた。国内での調達率は2割ほどにとどまる。

 世界風力会議(GWEC)によると21年の洋上、陸上を合わせた風力発電の導入量は1位の中国が3億4千万キロワットに迫る。日本は75分の1の452万キロワットに過ぎない。

 欧州や中国が先を行く中、日本の風力発電産業は縮み続け、まとまったサプライチェーン(部品供給網)は国内に存在しない。政府は40年に国内調達率を6割にする目標を掲げる。「『絵に描いた餅』とならないよう取り組む」と自らを戒める。

 かつて、日本企業が発電用の風車を輸出していた時代があった。

再生可能エネルギーが世界の一大産業になったのに、日本の存在感は薄いまま。とりわけ、今後急拡大が見込まれる風力発電の出遅れは深刻です。東京電力福島第一原発事故を経験し、エネルギー政策を根底から見直す機会もあったのに、世界に後れをとったのはなぜなのでしょうか。

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