熱海百条委、きょうから証人尋問

黒田壮吉 魚住あかり
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 静岡県熱海市で昨年7月に発生した土石流災害の原因を調査する市議会調査特別委員会(百条委員会)が11、12の両日に開かれる。起点とされる盛り土があった土地の前・現所有者や関係者ら計7人を証人尋問する予定だ。これまでに出た証言では、盛り土の造成経緯などで主張が食い違っており、実態解明が進むか注目される。

 百条委は今年3~4月、計5日間にわたり、盛り土を造成した業者や熱海市の斉藤栄市長、元担当課長ら計19人を参考人招致した。2007年に市に出された計画で現場責任者とされた男性は、盛り土造成への関与を否定。一方、09~10年に盛り土を造成したという業者の幹部は、この男性の盛り土への関与を主張するなど盛り土造成については判然としない部分が多い。

 百条委は11日、県と市のOBを含む職員らを参考人招致する予定で、行政の対応が適切だったか問う見通しだ。これまでの百条委では、市の元職員が「(県は)市の案件との考えで、積極的に対応してもらえなかった」と証言するなど、当時の県の対応を疑問視する声が出ている。市も11年、前所有者に防災対策を命じる措置命令を見送った経緯があり、両者の連携のあり方についても問われそうだ。

 12日には、土地の前・現所有者のほか、2人の関係者が証人尋問される。県などによると、盛り土の防災対策は不十分だったとされ、土地所有者2人の危険性の認識や安全管理が最大の焦点となる。

 地方自治法は、百条委で証人が正当な理由なく出席や証言を拒むことを禁止している。

 土石流は昨年7月3日に発生し、災害関連死を含む27人が死亡、1人が行方不明になっている。(黒田壮吉)

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 静岡県熱海市の土石流災害で、起点とされる盛り土が造成された時期に土地を所有していた前所有者の男性(71)が朝日新聞の取材に応じた。「盛り土の申請はしたが、うちの会社から土地を借りた別の業者が盛り土をした」と主張。崩落の危険性の認識についても「計画を超える盛り土があるとは全然知らなかった」と否定した。

 前所有者は、神奈川県小田原市の不動産会社の元代表。06年9月、熱海市伊豆山の現場一帯の土地を富裕層向けの別荘地を造成する計画で購入したという。07年3月、「がけを埋めて分譲地を作ろう」と熱海市に盛り土の計画を届け出た。

 しかし、土砂を現場まで運ぶ業者が見つからず、自社で埋め立てる計画を断念したという。「残土処分をしたいという業者がいて、土地を貸した。現場は任せていた」と話す。

 これまでの百条委では、前所有者が盛り土を指示したとの指摘もあった。これについては、「自分が業者に盛り土を指示したことはなく、残土処理に関する金銭の授受もなかった」と否定した。

 11年2月、当初10億円で購入した土地を、現所有者に「未完成物件」として3億円で売ったという。「(現所有者は)解約もできたのに、未完成も承知で買った。10年間崩れておらず、うちは崩落に関する汚点はない」と主張。崩落の原因は「現所有者の現場付近での開発行為が原因だ」とした。

 一方、現所有者の代理人弁護士はこれまでの取材に「行政から土地にさわらないでくれと指導されていた。土地を購入してから土石流が生じるまで一切の工事をしていない」などと話している。(魚住あかり)