お節介に支えられ、生きられた 戦争孤児だったサヘル・ローズさん

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中井なつみ
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 「みんなに、おせっかいをしてほしい」。イラン・イラク戦争で戦争孤児になった俳優のサヘル・ローズさん(36)は養母と来日し、見知らぬ人からの「おせっかい」の輪に救われたといいます。願いは、この輪を世界に広げていくことだそうです。(中井なつみ)

誕生日も、名前もなかった私

 本当の名前も、生年月日も知らない。イラン語で「砂漠に咲くバラ」を意味する現在の名前は、7歳のときに自分を孤児院から引き取り、養子に迎えてくれた母、フローラ・ジャスミンさんが付けてくれたものだ。

Sahel Rosa 1985年生まれ、イラン出身。イラン・イラク戦争で孤児となり、幼少期を孤児院で過ごす。8歳で養母のフローラさんと日本へ。高校生のとき、ラジオ局のオーディションがきっかけで芸能活動を始め、舞台、映画、バラエティー番組などで活躍。近著に、自身を支えてくれた言葉をまとめた「言葉の花束 困難を乗り切るための自分育て」(講談社)。

 母親の知人を頼って8歳で来日したものの、言葉も分からず、孤独を感じることも多かったという。母は仕事を掛け持ちしていたが経済的に苦しく、公園のベンチで寝泊まりしながら学校に通っていたこともある。

 「当時、私はまだ子どもで状況がきちんと理解できていなかった。でも、夕方になると、仕事から帰った母と公園のベンチで待ち合わせをしていたことは覚えていて、おなかは、いつも空いていました」

 お風呂にも毎日は入れず、クラスメートからは露骨に強い言葉を掛けられたり、いじめの標的にされたり……。「幼少期の記憶はつらいことが多い」という。

 そんな状況の中、スーパーの試食コーナーの女性店員から初めての「おせっかい」を受けた。

見返り求めぬ「お節介」

 値引きされた商品を探しに、毎日、スーパーへ行っていた。少しずつ盛られた試食の料理はとても魅力的に映った。当たり前のように手にとって口に運んでいる人を横目に、「お金を請求されるに違いないと思って食べられなかった」。初めのうちは試食コーナーを避けるようにしていたものの、どうしても空腹が我慢できなくなったある日、試食の「春雨のごまあえ」を一つ手に取った。

 ほんの一口だったが、「口に含んだときのおいしさ、おなかが満たされるときの幸せな気持ちは、いまでも鮮明に覚えている」。

 それからは、毎日のように母と試食コーナーを回るのが習慣になった。運のいいときは、デザートを食べられることもあった。

 ただ、そんな親子の様子が目立たないわけはなく、周囲の目を引いていた。ある日、いつも試食を出してくれる女性に呼び止められた。

 怒られるんじゃないか………

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