韓国の街角に見る生きづらさ 新政権は「ともに幸せに」とうたうけど

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ソウル=稲田清英
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 高層マンションの建設が進むそばに、昔ながらの庶民的な食堂や商店が並ぶ。ソウルの一角で酒場を営む女性(59)は、3月の大統領選で、当選した尹錫悦(ユンソンニョル)氏に投票した。

 尹氏は検察出身で政治経験は乏しいものの、逆に新鮮に感じた。「長く政治をやってきた人がうまくやってくれるとは限らないから」。保守系の候補で当時は野党側だったが、党派にもこだわらずに選んだ。

 新政権への望みは、まず経済の安定だ。コロナ禍で客は以前の4分の1。「この2年の間、お客も売り上げも減って本当に大変な日々だった」。ピーク時に比べれば感染者は少なくなり、4月にようやく営業時間などの規制が緩和された。

 だが、今度は急激な物価の上昇で仕入れの負担が増え、収益を圧迫しつつある。「すべて期待通りにいかなくても、失望はさせないでほしい」と思う。

 新政権が掲げる「国政ビジョン」は、「再び跳躍する韓国、共に幸せに暮らす国民の国」だ。「民間が引っ張り、政府が後押しする躍動的な経済」「誰もが幸せな社会」などと耳に心地よい「展望」が並ぶ。

 コロナ禍で打撃を受けた自営業者への支援、進歩(革新)系の文在寅(ムンジェイン)政権のもとで急騰した不動産価格の安定化といった施策のほか、「規制緩和による経済成長の推進」「質の高い子育て環境づくり」などと盛りだくさんだ。

 尹氏は10日の就任演説ではこう述べた。「行き過ぎた両極化と社会的な葛藤が社会の発展の足を引っ張っている。急速な成長なくして解決するのは難しい」

 尹氏の言う「両極化」は韓国に長く定着した構造的な問題だ。富裕層と貧困層、大企業と中小企業、正規職と非正規職、高齢者と若者、ソウルと地方……。いくつもの分断が横たわる。

 若者の就職難は続き、多くが就職を望む待遇の良い大企業は「狭き門」だ。そして、不動産の高騰がマイホームの夢をさらに遠ざけた。4月のソウルのマンションの平均売買価格は約12億7700万ウォン(約1億3千万円)と、5年前の前政権の発足時の2倍以上だ。

 ソウル市内の商店街で長く菓子店を営む金相範さん(59)は「我々の世代はなんとか家を一つは持てたけど、これだけ高くなったら若い世代は大変だよ」と次代を思いやる。韓国の合計特殊出生率は0・81(2021年)で、世界的にも異例の低さだ。急速な少子化はそうした社会の「生きにくさ」の反映でもある。

 ソウル南西部で、月額家賃5…

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