「自信が持てない」 男性の悩みに、枝元なほみさんが勧めた煮物は

記事の後半でレシピをご覧いただけます。

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 料理研究家枝元なほみさんは「食」から社会の問題を問いかけてきました。

 2003年創刊の「ビッグイシュー日本版」は路上生活者の自立を支援する雑誌です。ホームレスの人らが雑誌を仕入れ、街頭で販売します。定価450円のうち230円が彼らの収入になります。「押しつけるのではなく、雑誌を売る仕事を提供するという関わり方がフラットで明快。そこがいいなと思いました」と枝元さんは話します。

 創刊から間もなく、スローフード特集で取材を受けることになり、「私も何かやらせてください」と申し出ました。「人生初の『営業』でした」。現在は、読者からの人生相談に雑誌の販売者が回答すると共に枝元さんが「悩みに効く料理」を作る連載をしています。

 40代の男性会社員から寄せられた「自信を持てることがありません」との悩みに、枝元さんは料理を薦めました。「簡単な料理でも、おいしくできたなあと思うと、それだけで自信がつきますもん」。紹介したのは里芋の煮っ転がしです。

 皮をむき、そのまま煮るだけのシンプルな作り方です。「和食の料理人さんや料理書には、六方むきにするとか下ゆでするとか、色々あるんですが、農家のお母さんから教わったこの方法が一番おいしかった」。今回は鶏肉も一緒に煮ました。「難しく考えすぎず、自分のやり方でいいのだと思います」

 一昨年からは「夜のパン屋さん」プロジェクトを手がけています。協力店からその日残ってしまいそうなパンを集め、夕刻から販売する。働く場と収入を生み出す、食を通じた仕事づくりです。枝元さんは「時間が来たら食べ物を捨てねばならないなんて、いまの社会のあり方の問題」と話します。大量生産、大量消費、大量廃棄のループはもう続けられない。「この仕組みを問い直し変えたい。新しい価値観に向かって、亀のように歩いていきます」(構成・大村美香、小林未来

 えだもと・なほみ 1955年横浜市生まれ。著書に「枝元なほみのリアル朝ごはん」など。NPO法人「ビッグイシュー基金」共同代表を務める。

里芋と鶏肉の煮物

【主な材料・4人前】里芋600g(大6~7個)、鶏モモ肉1枚、ショウガ千切り1/2片分、A(酒、みりん各大さじ3、しょうゆ大さじ3~3と1/2、水1/2カップ)、細ネギ適量

①里芋は皮をむき、一口大に切る。鶏肉は脂肪と筋を除き、一口大に切る。

②鍋にAを煮立てて、ショウガ、鶏肉、里芋を入れ、落としぶたとふたをして中火で10分煮る。

③上下を返して様子を見て、弱火でさらに5~10分煮る。この時水分が少なければ水1/2カップ程度を加える。トータルで15分から20分煮るのが目安。

④器に盛り、小口切りにした細ネギを飾る。

1人前約285kcal、塩分2.1g(栄養計算:女子栄養大学栄養クリニック)

 煮汁の分量は少なめですが、思ったよりも里芋から水気が出ます。鍋によって水分の蒸発量が違うので、最後の方は焦げ付かないよう、様子を見てください。

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