幻の鳥・ヤイロチョウはどこへ行った 森を舞う新参者の脅威

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蜷川大介
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 「幻の鳥」と呼ばれる渡り鳥がいる。ヤイロチョウ(八色鳥)。カラフルな羽毛を持つことからその名がついた。絶滅が危惧されるこの鳥を保護するため、寄付を募って森林を買い取る「ナショナルトラスト運動」が、四国で20年間展開されてきた。だが、ここへ来て森に未知の鳥が出現した。

 ヤイロチョウは体長約20センチ。コバルトブルー、緑、赤などの羽毛を持つ。毎年、愛鳥週間(5月10~16日)の頃に西日本に飛来し、9月まで繁殖。東南アジアなどで越冬する渡り鳥だ。警戒心が強く、深い森の中で子育てをするため、人の目に触れることはほぼ無い。環境省絶滅危惧種に指定している。

 ヤイロチョウの繁殖が1937年に国内で初めて写真で確認された高知県は、県鳥に定めている。

初対面まで25年

 公益社団法人「生態系トラスト協会」(高知県四万十町)の会長を務める中村滝男さん(70)は、四万十川中流域で保護に取り組んできた。

 山口県出身で子どもの頃に図鑑で見たヤイロチョウの美しさに魅入られた。高知大に進学して野鳥の会を結成。日本野鳥の会保護部長などを務め、さえずりを聞けば、どんな野鳥が何を伝えているのか分かる。そんな中村さんですら、野生のヤイロチョウを初めて目にできたのは、高知へ移住して25年目。「私にとっても『幻の鳥』だった」

 2002年からは全国から寄付を募って、生息地の森を買い取る「ヤイロチョウの森トラスト」を始めた。協会員はいま約300人。ペア1組が営巣するのに必要な面積を10ヘクタールと見込み、取得した森林は約300ヘクタールに達した。東京ドーム65個分の面積だ。さらに隣接地に260ヘクタールの社有林を持つ王子ホールディングスと保護協定を結び、生態系調査などに取り組んできた。

巣がみつからない

 トラストで取得した森を管理し、不審な人の出入りを防ぐため、「森の番小屋」で暮らす中村さんは「保護活動は順調に進んできた」と振り返る。18年夏には協会員がヤイロチョウの子育てを鮮明な動画で撮影することに成功。20年には協会の来訪者に記録動画を閲覧できるようにした。

 異変を感じたのは21年夏。例年なら5月ごろ保護区に飛来し、ペアで営巣を始めるヤイロチョウだが、この年はなかなか鳴き声を聞けなかった。巣も見つからない。「なぜだろう」と協会員や住民と話し合ううち、思い至った。

■レジャー施設から脱走…

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