「10年前は総スカン」 なぜ小学生の全国大会廃止が共感されるのか

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野村周平
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勝利至上主義を考える

 行き過ぎた勝利至上主義が散見される――。そんな理由で小学生の柔道個人戦の全国大会が廃止になった。バルセロナ五輪の柔道女子52キロ級銀メダリストの溝口紀子さん(50)は、10年以上前から小学生世代の全国大会中止を訴えてきた。

 「当時、私の意見は総スカンだった。なぜ今は広く受けいれられているのだろう」。その疑問を掘り下げていくと、社会のある変化と結びついたという。

 溝口さんは2014年に全日本柔道連盟の評議員に就任。煙たがられても公開の会議で小学校の全国大会の見直しを唱えていた。それ以前から学会の場で、試合が可能な年齢や体重別階級の再考を主張していた。

 「私が小学生の時、全国大会はなかった。でも中学2年の時、憧れの存在だった山口香さんと試合をしたくて階級を落とした経験がある。52キロ級の試合に出るために約8キロ減量した。成長期できつかった。生理は止まったし、肩を痛めて今は人工関節が入っている。歯もボロボロです。あの苦しさを実体験として知っているから、子どもたちが厳しい減量をして参加している全国大会に危険性を感じ、警鐘を鳴らしたんです」

 「柔道事故の問題も顕在化していた時期でした。小学生の死亡例があると知り、あり得ないと思った。全国大会があれば、試合数が増えて練習も厳しくなる。当然、事故が起きやすくなる。周りには柔道事故で死亡した知人がいるし、体がぼろぼろになった後輩もいました。柔道界は競技の安全性についてもっと早くから対策を練るべきだった」

 溝口さんの思いは当時から変…

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    中小路徹
    (朝日新聞編集委員=スポーツと社会)
    2022年5月12日9時51分 投稿
    【解説】

     かつて「総スカンだった」という溝口さんの肌感覚がわかります。  柔道事故の多発が問題視され始めたのは2012年ごろからです。子どもが柔道の中で死亡したり、重大な後遺症が残るけがを負った人たちがつくった全国柔道事故被害者の会が、警鐘を鳴ら