芝野が驚異の逆転劇 余の包囲網切り裂く作戦、しかも着手は1分以内
まれに見る大混戦の名人戦リーグは佳境を迎え、勝つと負けるでは天地の差がある上位の星のつぶし合いが激化している。今月2日の首位攻防戦、芝野虎丸九段VS.余正麒八段は、芝野が豪快なうっちゃりを決めて単独首位を死守。逆転首位を狙った余は一転して挑戦者争いから脱落した。
開幕3連勝の好スタートを切るも、4月に開幕4連敗の本木克弥八段に足をすくわれた芝野は、余に負けると2敗グループ6人の大集団にのみ込まれる。かたや余は、芝野の初黒星で一度は同星首位に立ったが、直後に伊田篤史八段に手痛い2敗目を喫していた。しかし芝野との直接対決を制すれば、失地挽回(ばんかい)して首位に躍り出る。
盤上は両者の勝利への執念が匂い立つかのような激闘となった。中盤戦の入り口で余がパンチを決めてリード。さらに芝野の下辺黒の一団を強襲し、中央への逃げ道を塞いで勝負を決めにいった。このまま何ごとも起こらなければ碁は終わる。芝野は事を起こさなければならない。
芝野、プロのすごみ
ミッションは余の包囲網を切り裂き、黒の一団を助け出すこと。見事な逆転のドラマを、囲碁担当の大出公二記者が対局者への取材をもとに詳報します。
図▲と△を換わって黒1以下…