部下の心、知らないうちに離れているかも JTCを知っていますか

聞き手・吉川一樹
[PR]

 職場で、働き方や家事、育児への意識をめぐり、世代間ギャップを感じたことはありますか? ドラマ「わたし、定時で帰ります。」の原作者で、仕事や家事、育児などのケア労働をテーマにした著作の多い作家の朱野帰子さんに聞きました。

 「JTC」って知っていますか? 伝統的な日本の大企業(Japanese Traditional Company)を略したネットスラングです。

 「あの会社はJTCだから、資料はタブレットで見せるのではなく、プリントアウトして紙で持って行かないと」とか、「うちの会社はJTCだから福利厚生がよく、正社員はあまり働かなくてもクビにならない」といったように、半ば自虐的に使われます。

JTCから転職する理由に気づいていない

 JTCは若い世代が相対的に少ないのが特徴です。その若い世代が、ボリュームの多い年配世代に対し、「今の時代、その言動はハラスメントにあたるのでは」とか、「最近は共働きやひとり暮らしの人が多いので、家事や育児の時間への配慮が必要ですよ」といったことを説明しなければならない場面が多いと聞きます。

 私は1979年生まれで、「技術・家庭」が中学校の授業で必修になった世代です。男子も料理をし、女子もはんだごてを習いました。就職氷河期も経験し、上の世代とは色んな点で意識が違うと日々、感じています。

 上司に、今の社会の現実を説明してから仕事をしなければいけない。そんなストレスがよく、SNS上で吐き出されているのを見ます。何年も働いて、スキルも人脈もある私の周囲のアラフォーは、「これがなければ、仕事の生産性がもっと高まるのでは」と考え、JTCからスタートアップ企業などに転職した人が多いです。リスクはあっても、いきいきと働いているように見えます。

 彼らや彼女らが転職したことを、「せっかく『働き方改革』をして、ホワイト企業にしたのに」と上の世代は嘆いていますが、なぜ転職したのか、本当の理由には気づいていません。

ケア労働を評価しない上司は…

 価値観がアップデートできておらず、ケア労働を評価しない上司は、40代以下の部下からはかなり驚かれているのでは。上司が気づかないうちに、部下の心はどんどん離れているかもしれません。取材などで色々な会社に行っても、最後はこの話になるんですよね。

 JTCには、社員を育てる仕組みがしっかりしているなどのいい面もあります。多様な働き方をする人が中枢に増えて、変わっていってほしいです。(聞き手・吉川一樹)

あけの・かえるこ 1979年生まれ。大学卒業後、会社員を経て2009年に『マタタビ潔子の猫魂』で第4回ダ・ヴィンチ文学賞を受賞し、作家デビュー。主な著作に『海に降る』『駅物語』『対岸の家事』など。家族は会社員の夫と子ども2人

  • commentatorHeader
    長島美紀
    (SDGsジャパン 理事)
    2022年5月16日9時7分 投稿
    【視点】

    JTCというネットスラングはこの記事で初めて知りましたが、なるほどなあ、と自分の身近なケースを思い浮かべながら頷いてしまいました。 私は1977年生まれなので、朱野さんより少し上の世代なのですが、バブルがはじけたことで実家が倒産し、学費を

  • commentatorHeader
    平原依文
    (社会起業家・SDGs教育支援会社代表)
    2022年5月15日23時12分 投稿
    【視点】

    「JTC」という略語はこの記事で初めて知りましたが、少し視点を変えると日本における働き方の多様性が広がっているとも捉えることができます。 私自身4年前に新卒で入社した大企業を1年で辞めて、社員が2人しかいないスタートアップに転職をしま

Think Gender

Think Gender

男女格差が先進7カ国で最下位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[記事一覧へ]