神山征二郎監督が映画「さくら」のフィルム寄贈 舞台の郡上市に

深津弘
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 「太平洋と日本海を桜で結ぼう」と、桜の植樹を続けながら病に倒れた岐阜県郡上市白鳥町出身の佐藤良二さんを描いた映画「さくら」(1994年公開)。岐阜市出身の映画監督、神山征二郎さん(80)の作品だ。神山さんは10日、映画の舞台にもなった郡上市を訪れ、「昭和の時代の郡上を再現した文化的価値があるので、上映会を開いて地元の子どもたちに見せてほしい」と、35ミリフィルムなどを市に寄贈した。

 佐藤さんは名古屋市と金沢市を結ぶ旧国鉄バス「名金線」の車掌だった。ダム建設で移植された樹齢400年の荘川桜に涙する老女の姿に感動し、1966年から桜の苗木を路線沿いの停留所などに私費で植え続け、約2千本まで植えたところで病気で亡くなった。まだ47歳で夢半ばだった。

 映画は篠田三郎さんと田中好子さんが佐藤さん夫妻を演じ、美しい郡上の自然や祭りも登場する。

 郡上市の日置敏明市長を訪ねた神山さんは「昭和30年代から40年代くらいの郡上を再現するために、当時のバスやオート三輪を使うなど、(制作には)お金がかかった。郡上ゆかりの作品として文化的価値もある」と語り、35ミリフィルム7巻や台本などを渡した。

 日置市長は「貴重なものをいただいた。佐藤さんのことを忘れないように活用したい」と述べた。

 生前、佐藤さんの行動は周囲になかなか理解してもらえなかったが、壮大な夢を追う理由について、「この地球の上に天の川のような美しい花の星座をつくりたい。花を見る心が一つになって人々が仲良く暮らせるように」とのメッセージを残した。

 神山さんは「佐藤さんは寄り合いで99人が賛成しても1人反対する人で、芸人的なところもあった。その変人の中にある人間的なものを探し出すのが私の仕事だった」と振り返り、いま子どもたちに対し「自然と切り離されたところで人間は生きていけない。そのことを理屈ではなくて、桜を植え続けた物語の中で感じ取ってほしい」と思いを語った。(深津弘)