火災の社殿再建へ「たちあがりえびす像」 神社が建立

寿柳聡
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 市内に800体を超すえびす像がある佐賀市にこの春、新たな像が建立された。放火で焼失した神社の再起を願ってクラウドファンディング(CF)で造られた、その名も「たちあがりえびす」。社殿再建にも792万円という多額の「おさい銭」が匿名の現金で寄せられ、地域を元気づけている。

 佐賀平野の麦畑やクリークに囲まれた西宮社(佐賀市北川副町光法)で火災があったのは2020年11月8日の夜。社殿は完全に焼け落ち、宮司の日吉高明さん(60)はぼうぜんとしたという。「最初は漏電でもあったのかと思った」。だが、2日後に近くの別の神社でも火災が起き、連続放火事件に巻き込まれたと分かった。容疑で逮捕された男は「心神喪失で刑事責任を問えない」として不起訴になった。

 西宮社は、全国のえびす神社の総本社である西宮神社(兵庫県西宮市)から1172年に九州で初めて分祀(ぶんし)された由緒ある神社。その境内にあり、佐賀市内に現存するものとしては最古という石造えびす坐像は市の重要有形民俗文化財に指定され、市内のえびす文化の発祥の地とされる。

 市内最古のえびす像は大きな被害は免れたが、社殿再建の費用は1億3千万円と見込まれた。地域の人たちで再建委員会を立ち上げて検討するなか、まず再起のシンボルとなる新えびす像から造ることになり、昨年12月1日からCFを開始。本家の西宮神社が告知に協力してくれたこともあり、今年1月下旬までに全国各地の138人が支援。地元の寄付も合わせ約170万円が集まった。

 たちあがりえびすは、鯛(たい)を抱えたえびすさんが右手を突き上げて上を見上げる姿。4月20日にお披露目され、さっそく訪れる人たちの笑顔を誘っている。

 社殿再建でも思わぬ出来事があった。3月下旬の朝、神社の参拝と見回りをしていた再建委員長の男性が日吉さんに電話してきた。「さい銭箱のとこに紙袋があったっちゃんね。お金を一緒に数えんと……」

 日吉さんは「小銭がたくさんあったのかな」と思ったという。ところが、男性が持ってきた紙袋から出てきたのは、お札が入った郵便局の封筒が数十個。「全部1万円札で、792万円あった」。《氏子の者です。匿名ですけど再建に役立ててください》と記された手紙も入っていた。

 日吉さんは「ほかの人に盗まれると大変な額。男性が毎朝神社に通っているのを知っている人だから置けたのでは」と推察。「そういう方を神様が導いてくれた。佐賀の文化の拠点になれるよう頑張らないと」と思いを新たにする。

 そんな浄財も合わせ、5月8日時点で集まったのは約6200万円。再建委(090・1081・9782)は7月末をめどに引き続き寄付を募っている。

 西宮社では8日、新えびす像建立を記念した「大願成就まつり」を開催。集まった人たちは、西宮神社ゆかりの人形芝居えびす座の公演を楽しんだ後、輪になって「えびす音頭」を踊って再建への思いを新たにした。(寿柳聡)