盛り土造成主導者なお不明 熱海土石流、百条委が証人尋問

村野英一 床並浩一 山崎琢也
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 静岡県熱海市土石流災害の原因を究明する調査特別委員会(百条委員会)は12日、崩落した盛り土があった土地の前・現所有者と関連業者への証人尋問があった。焦点となる盛り土の造成の過程に関し、前所有者が主導したことを3人の業者が主張したが、前所有者は自らの責任を否定し、食い違ったままだった。

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 盛り土は主に2009年3月~10年夏に造成され、条例の基準の3倍の高さ約50メートルだった。前所有者は土地を貸した業者に造成を任せたとし、「当社は(盛り土の)許可を申請したが、埋め立て行為者ではない」と強調した。盛り土の高さに関する認識を問われると、「コメントできない」と応じなかった。

 一方、盛り土造成地に土砂を搬入した業者は「(前所有者から)残土を入れてくれと頼まれた」とし、「10年7月には指示された形状がほぼ完成した」と前所有者の主導で造成されたことを説明した。

 盛り土の隣接地で工事に携わった業者は前所有者と業者1社に「(盛り土の)一番の責任がある」と語った。当時の現場責任者とされた業者は自らの盛り土への関与を否定した上で、前土地所有者が造成を指示したことを指摘した。

 稲村千尋委員長は取材に「前所有者が指示したことで3人は一致したが、前所有者は関与しなかったと言っており、真実はわからない」と苦渋の表情だった。(村野英一)

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 土石流災害から10カ月。現所有者は初めて公の場で証言したが、自身の関与や責任について全面的に否定した。

 盛り土の防災対策工事を終わらせずに引き渡した前所有者がこれまで、「未完成も承知で買った」と主張してきたが、現所有者は、県条例に違反していた盛り土について「(購入時に)承知していなかった」と否定。「細かいことはわからないが、何かをしなければいけないとの認識はなかった」と食い違う主張を展開した。また、「具体的な市の指示はなかったと思う」としながら「だんだんになっている敷地に木を植えた。緑化はいいことだと考えた」とも述べた。

 盛り土の崩落現場に災害発生前に足を運んだことはなく、「不動産屋(取引業者)任せにしていることが多い」との認識も示した。

 代理人弁護士は証言後、報道陣の取材に「盛り土があることも危険性があることも知らなかった。法的な責任はない」と話した。(床並浩一)

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 証人尋問に立った工事業者らの証言からは、崩落した盛り土が造成当時から危険な状態だったことが浮き彫りになった。

 盛り土は前所有者が2007年に市に届け出た計画に基づき造成された。ただ、県によると、盛り土は高さ約15メートル、土砂約3万6千立方メートルの計画を大きく超えて造成され、崩落時には高さ約50メートル、土砂約7万立方メートル超になっていたという。

 計画で現場責任者とされた男性は、造成は別の業者がしていたと主張した上で、「造成中も現場では2回の崩落が起きている。重機が埋まり、掘り起こしたこともある」と証言した。

 盛り土の隣接地で工事に携わった業者も、崩落で埋まった重機を掘り起こしたことがあったと証言。そのうえで、「盛り土が9段ぐらい積まれていて、あんなに盛ったら駄目だと思った」と危険性を感じていたことを明らかにした。(山崎琢也)