千代田区のイチョウ伐採、問われる行政の「意志」 未来の都市像とは

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片田貴也
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 東京・千代田区の区道「神田警察通り」の整備に伴って、街路樹が伐採されることになり、住民から強い反対運動が起きています。

 計画では、歩道を拡張して、歩行者と自転車の通行スペースを設けるため、沿道のイチョウ32本のうち、30本を伐採する予定です。

 街路樹について研究している京都大の森本幸裕・名誉教授(景観生態学)は、都市計画では行政の強い意志が必要である一方で、その説明責任と住民の合意形成の両方が大切だと語ります。

 この問題をどう考えればよいのか、詳しく聞きました。

京都の御池通りのケヤキは…

 ――神田警察通りの伐採について、どう思われますか。

 報道によると、4車線のうち1車線を減らして歩道を拡張する計画で、伐採するようです。

 都市の将来を考えれば、自転車道の整備は必要な部分もあるかもしれませんが、伐採されるイチョウへの住民の思い入れも強いのもあり、無視するわけにはいきません。

 私の住む京都市にオフィスビルが立ち並ぶ「御池通り」があり、そこのケヤキは市民に親しまれていました。

 かつて、歩道拡張や地下街整備のために伐採の話が持ち上がったことがありましたが、最終的には全部切るのではなく、一部をシンボル的に新しい街路樹としても別の場所に移植し、それ以外の多くは公園などに移植して活用する選択をしました。そうした方法もあると思います。

 ただ一方で、都市計画では行政の強い意志も必要だと思います。

 ――行政の強い意志とは、どういうことでしょうか。

 街路樹というと、どこをイメージしますか。有名な大阪・御堂筋やパリ・シャンゼリゼ通りなど街路樹をみると、行政が方向性をつけていることがわかります。

 デザインや計画をどうしたいのかという行政の強い意志が重要です。幅広く意見を集約することも大切ですが、論点や課題などをはっきりさせないと生産的でありません。

 造園設計の分野では、市民の意見を採り入れる参加型デザインの手法も増えてきましたが、デザイン面からすると優れているとは言いがたい部分もあり、「プロがどう方針をたてるか」という視点がないと、単なる無責任なものになってしまいます。

 一方で、なぜこうした都市計画にするのかという行政の説明責任、住民の合意形成は不可欠です。

 神田警察通りのケースでは、報道によると、伐採方針は区報での周知ではなく、地元住民への説明会は、着手予定の1カ月前が初めてだったといいます。行政の説明はもっと早くからすべきで、十分議論する時間をとることも必要だったと思います。

記事の後半では街路樹の役割や、一部の自治体で進む小さい街路樹を植える「コンパクト化」の問題を考えます。

これから求められる「プラスを伸ばす緑化」とは

 ――街路樹をどうするかは、道路政策ともかかわります。どういうことが大切でしょうか。

 成熟した社会になり、道路をきれいにすれば市民に喜ばれる時代は終わりました。

 これまでの道路の緑化は、環…

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