「なんでみんな、背が低いのを言うの。やめようよ。身長じゃないって、プロ野球は」
西武の渡辺久信GMは、強めの口調で言った。13日、育成2位のルーキー、滝沢夏央(18=新潟・関根学園高)が支配下登録された。その記者会見後のことだ。
滝沢は身長164センチの内野手。現在のプロ野球で、最も背の低い選手だ。
会見では「身長」に関する質問がいくつか続いた。
「身長で悩まされたこともあったけど、自分の体だからできるプレーというのもあると思う」「大きい選手には負けないという気持ちがあります」
滝沢は一つひとつ、丁寧に質問に答えた。
会見を聞く限り、今の滝沢は身長が低いことも選手としての個性ととらえている。俊敏な動きを生かした広い守備範囲は、「彼が1軍で守っている姿を想像するだけでも楽しみ」とGMがほれ込むレベルだ。
ただ、滝沢自身、体の大きな選手にパワーではかなわないことなどを、少なからずコンプレックスに感じていた時期もある。
だからこそ、GMは身長に関する質問が続いたことが気になったのだ。「彼も散々言われてきただろうし、あえてそこをクローズアップするのはどうかと思う」。選手を守る、親心のようにも感じた。
滝沢はこの日、早速1軍に昇格し、「2番遊撃手」で先発出場を果たした。
高卒1年目の遊撃手としては坂本勇人(巨人)や今宮健太(ソフトバンク)、小園海斗(広島)ら、そうそうたるメンバーよりも早い先発デビューだ。
複数の守備機会を無難にこなすと、見せ場は逆転された直後の六回に訪れた。
先頭で打席に入ると、二塁への力ない打球となったが、俊足を飛ばして内野安打に。失策も絡んで二塁へ進んだ。
続く外崎の打球はゴロで三遊間へ。判断の難しい打球だったが、迷いなくスタートを切り、一気に三塁を回る。
俊足、そして速度を落とさないヘッドスライディング。同点の本塁に触れた。試合後は勝ち越し本塁打の中村剛也とともに、お立ち台にも呼ばれた。
「夢のような景色でした。次また活躍できるように頑張りたい」と、泥だらけのユニホームで言った。
GMの言葉通り、野球に身長は関係ない。逆に言えば、言い訳にもならない。この日、早くも見せてくれた「スピードを生かした守備と泥臭いプレー」を武器に、滝沢はプロ野球で勝負していく。(山口史朗)
たきざわ・なつお 2003年8月13日生まれ。新潟県出身。関根学園高では遊撃手兼投手。昨夏の新潟大会は準々決勝で日本文理に敗れた。昨秋の育成ドラフト2位で入団。身長164センチ、体重65キロ。右投げ左打ち。
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