定額制キャンプ場、釣り堀にこもる故郷への思い 三重

臼井昭仁
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 熊野灘に面した三重県南伊勢町に、相次いで体験型のレジャー施設ができた。初心者向けの海の釣り堀、そして定額制をうたったキャンプ場。「派手さ」はないが、過疎化が進む故郷を思う、造り手の熱意が込められている。

 同町船越の国道260号沿いに4月にオープンしたのが釣り堀の「みなみいせレジャー村」。敷地面積は4千平方メートル。うち掘削して設けた釣り堀は広さが400平方メートルで海水を入れており、アジやイナダを泳がせている。五ケ所湾の入り江に突き出た約100メートルの桟橋の先には、いけすを設け、タイなどが釣れる。

 入場料は2200円(8月末までは1500円)。貸しざおと餌、保冷用の氷が付く。釣った魚を持ち帰る場合はタイが2千円、アジが500円。

 このほか伝統的な漁法で手で魚を捕まえる「たて干し」体験ができる人工の砂浜もある。

 事業費は8千万円。中心となったのは物流系のドリームホールディングス(本社・松阪市)の会長、渡辺家辰さん(81)。戦時中、母親の実家があった現在の南伊勢町へ疎開し、18歳まで過ごした。町を出た後、近鉄系の運輸会社に勤め、現在の会社を興した。

 貧しかった子どもの頃は生活のため魚を取っていたが、大人になってからは釣りが趣味となり、よく通っていたという。「過疎化が進んだこの町で、何か活性化につながるものを造りたいと思っていた。釣りには初心者や子どもでも楽しめる場所になると思う」。

 営業時間は午前9時~午後4時で、火、水曜休み。詳しくはホームページへ。

 「定額制、24時間365日利用可の無人キャンプ場」。そううたっているのが同町木谷の「2four Camp」。町出身で東京在住のシンガー・ソングライター、翔大(しょうだい)さん(27)が開いた。

 広さ1500平方メートルで、電気、水道にWi―Fiを完備。各85~200平方メートルの6区画がある。年額4万2千円か、月額3500円を払って会員になれば、1人1日500~千円で何度でも利用できる。

 定額制にしたのは、会員の身元を把握できれば、主に町外で活動する翔大さんにとっても運営がしやすいという事情もあった。ウェブサイトで予約も支払いもできる上、チェックアウトは、利用した区画を撮影した画像を掲示板に投稿する仕組み。場内は、遠隔操作ができるライブカメラで管理するなどITを利用した省力化に努めている。

 5年ほど前に音楽活動のため東京へ出た翔大さん。町観光大使の肩書も持つが、豊かな自然に恵まれた町のことはほとんど知られていないと実感している。コロナ禍で活動が制限されていた昨年、たびたび帰省しているうちに、町の魅力の発信にもつながるキャンプ場を造ろうと思い立った。アウトドアのレジャーがブームになっていたことも後押しした。祖父が所有していた五ケ所湾に面した雑木林を、自ら重機を操作して切り開いた。

 開業後は、愛知や静岡など県外から、週末を中心に利用者が訪れている。会員は上限としている50人に近づきつつある。「規模が小さいことがむしろ人気につながっているようです。今後は売り上げの一部を、プラスチックごみの清掃といった環境問題の啓発活動に充てるなどの取り組みに力を入れたい」と話している。(臼井昭仁)