「学閥嫌い」「一生懸命診る」 医師大量退職の大津市民病院の新院長

菱山出
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 大津市地方独立行政法人・市立大津市民病院の院長に4月18日付で就任した日野明彦医師(66)が、朝日新聞のインタビューに応じた。京都大医学部から派遣されている複数の医師が退職の意向(一部は既に退職)を示し、地域医療への影響が出ている病院運営をどう立て直すかについて聞いた。

 ――日野院長も京都府立医科大出身です。京大出身の医師からは「府立医科大出身の医師に置き換えるのでは」との声も聞かれます

 全くの誤解です。確かに私も京都府立医科大卒ですが、かつて医局の教授とそりが合わず、勤務していた病院の脳神経外科に医師が派遣されなくなった。院長就任に当たって、府立医科大の学長にお会いし「学閥は嫌いです」と申し上げた。学長も「私も嫌いです」と。

 私はシカゴ大学の病院を経験していますが、米国では学閥など関係ない。医療の技術と患者と向き合う姿勢のみで評価が決まる。どの大学かにはこだわりません。

退職の医師や患者、市民に謝罪

 ――前理事長からパワハラを受けたと訴え、既に退職した医師もいます

 辞めた先生には心から同情します。業績を理由に退職を迫られたら、私でも頭にくる。言う以上は納得できるデータを出さないといけない。現場の人が働きやすい環境にするのが管理職の仕事です。

 今回の問題について、退職を迫られた医師をはじめ、職員、患者、一般市民の方に謝罪します。

 ――患者の受け入れを一部制限したことで、近隣病院の外来が混雑するなど、地域医療に影響が出ています

 今回の問題以降、「縄張り争いをしてどうなる」「市民に医療を提供するところではないのか」といったおしかりや苦情をたくさんいただいています。外来患者、入院患者も激減している。それでなくても赤字であっぷあっぷしているのに、強烈なダメージを食らった。

救急再開、不信払拭し患者呼び戻す

 救急の受け入れも止めていましたが、こちらは今月2日から再開しました。患者を呼び戻す奇策はありません。不信を払拭(ふっしょく)し、患者を一生懸命診る。地道に行動で示すしかありません。

 ――退職する医師の後任はどう確保しますか

 消化器外科については、既に同数の医師が着任して働いています。6月に退職予定の乳腺外科医1人については常勤医の招聘(しょうへい)を調整中です。脳神経外科医4人は9月に退職予定ですが、私自身が脳神経外科医なので、自分も担当します。

 今秋に脊椎(せきつい)外科のチーム招聘を検討します。泌尿器科医は9月に退職予定ですが、最終日まで全力で診療を続けると宣言してくれました。麻酔科医、放射線科医は残留が決まりました。その他の診療科で今回のトラブルに付随して退職する医師はいません。

 ピンチはチャンスでもあります。赤字体質を改めながら、地域住民の健康と福祉に貢献します。(菱山出)

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 京都大医学部出身の医師たちが退職の意向を示したのは、理事長の言動がきっかけだった。

 ある外科医師が、京都府立医科大出身の理事長から「主たるチームを京都府立医科大にかえたい」などと退職を迫られ、パワーハラスメントを受けたと訴えた。京大から派遣されている外科・消化器外科・乳腺外科の9人、脳神経外科5人、泌尿器科5人の医師らが退職することになった。

 ただ、病院が設けた弁護士による第三者委員会はパワハラとは認めなかった。混乱の責任をとり、理事長は3月末、院長は4月17日に辞任。院長の後任に済生会滋賀県病院の医師だった日野氏が選ばれた。

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 脳神経外科医。1983年、京都府立医科大卒。京都第二赤十字病院、シカゴ大研究員などを経て済生会滋賀県病院(栗東市)副院長、院長補佐を歴任。京都府出身。