公的資金注入は「地域のため」 きらやか銀行頭取が強調

辻岡大助、池田良
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 きらやか銀行(山形市)が13日、公的資金注入の申請の検討開始を正式表明した。業績は持ち直しているものの、長引くコロナ禍に苦しむ地元企業の支援を続けることを理由に挙げた。金融庁が認めれば注入が行われるが、3度目の公的資金となり、資金の活用や経営のかじ取りには厳しい視線が向けられそうだ。

 「昨今のウクライナ情勢や原油価格の上昇などの影響も加わり、新型コロナウイルス感染症により影響を受けた事業者が業績を回復するためには依然として長期間を見通す必要がある」

 同行の川越浩司頭取(58)は13日夕、山形市の本店での記者会見で、資料を読み上げるかたちで説明した。3月末時点の同行の自己資本比率は8・42%。2年後に返済期限を迎える過去の公的資金を返しても、自己資本比率は6%台以上を確保できる見通しというが、公的資金の活用に踏み切った。

 理由として挙げたのはコロナ禍だ。2020年春から丸2年以上続くが、収束の見通しはいまだ見えない。温泉旅館や観光をはじめとするサービス業は苦境が続き、立て直しには設備資金もいる。「今まで以上にリスクテイクを行う観点から、あらかじめ資本を増強しておく必要がある」と強調した。

 会見の主な質疑は次の通り。

 ――公的資金で資本増強をしなければ、地域経済を支えられないのか。

 「コロナの影響を受けている取引先の事業再構築に伴う設備投資などを考えるなら、必要な資金だと考えている。地元の中小企業をしっかり支え、守ること。それが我々の使命だ」

 ――行内で異論は出なかったのか。

 「広く議論してきた。選択肢としては第三者割り当ての優先株といった方法もないとは言えない。ただ、このような環境になった中で、お客様にお願いするとかが非常に難しいのではないか。その中でコロナ特例という選択肢が浮かび上がり、検討した結果、このような形になった」

 ――粟野学会長(66)が6月に会長を退くのは、今回の公的資金注入をめぐる引責辞任なのか。

 「それは全く関係ない。粟野から申し出があり、後進に譲りたいというのが一番だったと思う。年齢的にも内規もあって、そんなところも一つということ」

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 同行の親会社のじもとHDが同日発表した2022年3月期決算は、純損益が25億円の黒字と、前期の31億円の赤字から持ち直した。きらやか銀行単体は、本業のもうけを示すコア業務純益は44・1%減の36億円、純損益は10億円の黒字となった。債権運用損や貸し倒れに備えた引当金などで前期は過去最大の赤字だったが、そうした影響が少なくなり、純損益の黒字を確保した。(辻岡大助、池田良)

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 きらやか銀行の苦境の一因には、山形県内の企業に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う行動制限の影響が色濃く残ることがある。帝国データバンク山形支店(山形市)によると、今年4月に確認された県内の倒産件数(負債1千万円以上)は3件。製造、サービス、小売りの各業種の企業で、いずれも「新型コロナ関連倒産」だった。支店長の佐藤秀樹さん(48)は「コロナ禍が長引く中で、耐えきれない企業が出てきていると思われる」と指摘する。

 同社(東京)の12日までの調査では、県内のコロナ関連倒産は累計49件。東北をみると宮城56件、青森と秋田は各28件、福島24件、岩手14件で、宮城に次ぐ多さだ。「山形は特にコロナとの相性が悪いと思う」。佐藤さんは訪日外国人客インバウンド)の動向を挙げた。県などが積極的な誘致活動を進めた結果、県独自の調査によると、インバウンドの受け入れ延べ人数はコロナ前の2019年に40万人近くに達し、5年連続で過去最多を更新した。だが、コロナ禍の入国制限などで翌20年は前年比で7割近く激減した。

 佐藤さんは、その余波が及んだとみる。観光客が利用するホテル・旅館に酒類や食材などを卸す会社や、土産品を扱う企業などへのダメージが大きいという。

 「県内では人口減少や後継者不足といった元々の構造的な問題があったが、19年以降は消費税増税、さらにコロナ禍が加わった。小さな事業者の体力ではこの逆境にあらがいきれない傾向がある」と指摘する。(辻岡大助)